男女の異常で正常な闘い

@ushi9

正常が異常の中に入ると異常になる

私は小学6年生の時、都会から田舎へ引っ越してきました。

新しい小学校に最初は戸惑いましたが、新しい友達も出来て学校生活にも慣れてきました。


ただ、私にとって信じられない出来事が起こったのです。

転校後、1ヶ月くらいした頃の事でしょうか……




「よっしゃ!給食だ!」

「今日は何かなー?」


などと、小学生らしくガヤガヤと周りが騒いでお昼に想いを寄せている時のこと。

私も給食は楽しみでしたので、少しテンションが上がっていました。

すると1人の男の子が廊下を走ってきて、私の教室の扉を勢い良く開けました。


「おいっ!今日プリンだぞっ!!」


え?だから何なの?そんなに慌てて報告すること?と思った私は間違って無いはず。

無いはずなのですが、その男の子の言った一言を聞いた途端、全員が音を立てて椅子から立ち上がったのです。


「ついに来てしまったようだな…?」

「あぁ、鈴木の言う通りだ…」


(え?何? みんなどうしたの?)


「…俺達は加藤を出す」

「…アタシ達は木下さんよ」


「佐藤、どう見る…?」

「木下か、勝率は6割だがこのところ4連勝と波に乗っている。復帰戦の加藤では少し分が悪いか…」


加藤君と木下さんが教卓の前で向かい合います。

いつも仲の良い皆ですが、この時はただならぬ雰囲気で私は挙動不審になってしまいました。


「ね、ねぇ?何が始まるの?」

「そっか、転校してきてから無かったもんね。見てればわかるよ」


隣の友達に聞いても返ってきたのはそんな返事。


(見てればわかるって…なんで皆神妙な雰囲気出してるのよ…)


「本日の勝負は古来より伝わる三つの拳の型で勝敗を分ける【邪暗拳】とする!」


「ねぇ、佐々木君…それじゃんけんでしょ?」


「宣言しよう!俺はグーを出す!」


「まさか!アレは!?」

「知っているのか鈴木!?」

「ああ…宣言することにより、相手にチョキを出し難くさせる【宣言攻撃オーダーメイド


「いや…?じゃんけんでしょ?何必殺技があるかのように言ってるの?」


「フフフ、浅いわ加藤君。そうしたら私はパーを出すわ」


「木下さん!アレを使うつもり!?」

「知っているの日野さん!?」

「えぇ…【宣言攻撃オーダーメイド】に対して絶大な効力のある【対応宣言カウンターリンク】だだし、こちらも心理的に圧が掛かってしまう諸刃の剣…」


「ねぇ、相川さんも日野さんもどうしちゃったの?ただのじゃんけんでしょコレ」


「やるな、木下。だが、お前は俺がグーを出した時を考えてチョキを出せないのは分かっている…」

「……はたしてそうかしら?」


「ハッタリだ!加藤!!相手にチョキは無いっ!!こちらがパーを出せば問題ないはずだっ!」

「木下さん!相手は弱気よ!グーは無いわ!!チョキで押し切れるっ!!」


「ねぇ、それもう堂々巡りになるから何も考えない方がいいんじゃ?…私の声聞こえてる?」


「クク、木下…パーで来るのか?」

「…えぇ」

「信じよう、その言葉!」

「本当かしら?加藤君、左瞼が痙攣してるわよ?嘘をつく時の癖ね」


「馬鹿な!?この後に及んで【絶対看破ゴッドアイ】まで使用するなど…っ!!」

「木下さんっ!それ以上はっ!!」


「それ以上はって何なの!?身体に負担は何も無いでしょ!?」


「ウオオォォォー!」


「加藤が吠えた、勝ったな」

「あぁ…全てはこれからだ」


「クッ…させないっ!」


「木下さんが手を合わせて覗き込んだわっ!」

「あの構えをした木下さんは負けた事がないっ!勝てるっ!」


「吠えたからなんなの!? あと、あの覗きこむ奴良くやるけど何も見えないでしょ!?誰か答えて!?」



「行くぞ!」

「行くわ!」


「ねぇ!私がオカシイのっ!?何で皆んな固唾飲んでるのっ!?…お前ら私の話聞けよ!!!!」





---

結局木下さんが勝ってプリンを余りは女子の物になったんです。


加藤さんと木下さんはお互い握手を交わして真っ赤になってました。多分恋が芽生えたのでしょう。





プリン?美味しかったです。



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