第35話 エピローグ
はたと目を覚ますと見慣れた天井あった。
「もう朝か・・・」
僕はそうつぶやきながら体を起こす。今日の目覚めはバッチリ。筋肉痛もないし、アリスも昨日の内に部屋に案内した。その御蔭で今日は普段どおりの朝を迎えることができた。
「普段どおり・・・か」
アリスとの出会いから昨日までの間、僕は今までに経験したことが無いようなことが立て続けに起こった。少女が空から落ちてきて、実はその少女は人間じゃなく聖剣で、その後不思議な力に襲われて、撃退してエトセトラ。言葉にすると本当に意味がわからない。現代社会で起きたことなのかと疑いたくなる。
「タケルー。起きてるー?」
僕が布団の上で感慨に耽っていると、部屋の外からアリスの声が聞こえる。
「起きてるよー」
アリスは昨日から家に住むことになった。昨日、僕はアリスを家につれて返った後、すみれ姉にアリスがこの家で暮らせるようにお願いした。最初は親御さんの迷惑になると渋っていたが、様々な作り話をあれやこれやと話している内に滞在を許可してくれた。心の大きい姉を持って僕は嬉しい。
とは言え、親戚が引き取りたいと申し出たときは、有無を言わさずそちらに言ってもらうという条件を付けてきた。これはすみれ姉の都合だけじゃなく、アリスにとってもその方が良いだろうという忖度をした結果だと思っている。すみれ姉は言わないだけで、いつも色々気を回してくれる。
僕が返事をするとアリスが部屋の扉を開ける。
「ご飯できたって」
アリスがそう言うと僕は頷いた。
「ありがとう。すぐに行く」
「わかった。じゃあ先に言ってるね」
アリスは微笑んでそういうと、部屋の障子を閉めてトントンと早歩きでダイニングまで行く。僕もすぐに着替えてダイニングに向かった。ダイニングの扉を開けて入るとそこには4人がけのテーブルにアリスだけが座っている。昨日、一昨日とデッラルテが出迎えてくれたが、今日は居ない。デッラルテは昨日消えてしまったままだ。
デッラルテが転移中に話してくれた内容は、昨日の時点でアリスに伝えている。アリスは怒り出すか、悲しみだすか分からなかったが、僕の予想に反し無表情で、あっそうと短く言った。アリスはデッラルテとともに行動をしていたので、何かしらの違和感を感じていたのかもしれない。
ともあれ、今日は2日ぶりに学校へ行く。リクトも居ない学校で正直つまらないが、学校だけは言っておかないと、すみれ姉にこの家から追い出されるだろう。こうやって僕は日常に戻る。そして何日も掛けてリクトが居なくなったことを受け入れるのだろう。でも、僕はリクトの事は忘れない。リクトが使っていた2振目の聖剣もアリスがちゃんと管理をしている。
リクトはおそらく今日中に発見されるだろう。そしてその記事は一部ニュースになるのかもしれない。でもそれもすぐに忘れられてしまう。それでいい。それが日常だから。
「どうしたの?タケル?」
考え込んでいる僕を不審に思ったアリスが不思議そうに質問してきた。
「なんでもないよ」
僕がそう答えるとアリスは気の所為ならよかったと言った。
「あ、アリス」
「ん?何?」
「この家に来てくれてありがとう」
僕がそう言うとアリスは笑って答えた。
「どういたしまして」
ちょっといたずらっぽい可愛らしい笑顔だった。
現代で聖剣使いになっても仕方がない! ゆうさむ @fyrice
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