愛するのはあなただけ3
久しぶりの登校は、朝から身体がだるかった。疲れてるのもあるかも知れないけど、きっとそれだけじゃない。
「明日は学校来れそうか?」
と帰り際先生に待ってるぞと言われたら、もう覚悟を決めて行くしかない。
先生に会うのは気まずいけど、真帆や大地に会うのも気まずい。そんなことを考えていたら正門まで着いてしまった。
先生の用意してくれた部屋は学校から近くににあった。
「おはよう」
という前に、真帆が飛びついてきた。
「朱莉、大丈夫?」
「ごめんね、真帆。心配かけました」
「あー。もうよかった」
両手で抱きしめて頬を寄せて、歓迎してくれた。遅れて登校した大地は俯いて
「もう大丈夫なのか?」
と心配をしてくれた。
身勝手な私をこんなに優しく包んでくれる友達がいることがたまらなく嬉しい。
くよくよしてた私に、みんなをもっと信じなさいと説教をしたいくらいだった。
「大地、心配で心配で家に行ったみたいだよ」
真帆が大地の顔色を覗きながら教えてくれた。
「え。うそ」
もしかしたら大地は全部知っているかも知れない。昼休みになって大地を呼び出した。
「ごめんね。大地にひどいこと言っちゃった」
「気にしてないよ。でも」
俯いてため息をひとつ吐き出すと、大地は言葉を選ぶかのように続けた。
「でもさ、、、家出ていったって本当?」
「カズさんが言ってたの?」
「そう。あのロン毛のおっさんが言ってた」
「他には。他には何か言ってた?」
「なあ。もう隠さないで話してくれよ。俺とお前の仲だろう。俺だけ蚊帳の外なんてまっぴらだ」
珍しく声を張り上げる大地は泣いていた。私のために大地はなんで泣くの?何が起こっているのか見当も付かない。
心配してくれているのはよく分かる。でもそんなに大地にとって重要な事?ああ。わかった。私、大地の事、全然見てなかった。
幼馴染だからなんでも知ったような気でいたのは私の方だ。そう考えたら、情けなくなった。私って本当自分勝手だ。
「ごめん。ごめんね。私本当自分のことしか見えてなかった」
「話したくないならいいよ。でも俺のこと少しは頼ってよ」
大きい大地の背中に手を回した。ありがとう大地。
ピークエンドの法則「朱莉の場合」 鈴トラ @menzukuri
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