最初でサイゴの逃避行
鐘絵くま
最初でサイゴの逃避行
室内に
「……っ、王位選は誰に、お入れに?」
「ああっ! ……リリー様、に」
「ねえ……オリヴィア様に、なさらない?」
「いっ、いいわ、アンナ……。オリヴィア様にするっ、わ」
私の住む西ロマノフは、東ロマノフとの国境線に近い街で
私は西側の
しかし、今回のターゲットである東ロマノフの
彼女は胸から尻にかけてメリハリのある身体で、
こうなったらと、私は東側のスパイ学校に生徒として潜り込んだ。
十名の新人が集まった教室にカーリが入ってきた。
「新入生、よく聞きなさい。女性を落とすには、
カーリの甘さのある声と挑発的な視線に、
座学中も彼女は妖艶さに満ちていて、毒のように私の心を侵食していった。
「次、アンナ・コルホネン。実技の部屋にいらっしゃい」
「はい」
私はカーリとの実技演習を純粋に
「これで
快楽に
「今度は私が。オルセン指導官、声、気を付けてください」
「ふ、言うわね」
私はこれまでの技術を結集してカーリを攻め立てた。押し一方からの絶妙な焦らしで、カーリを絶頂に押し上げた。
「……やるわね。私を
とカーリは言い、不敵な笑みを浮かべた。
次の実技もお互いに激しかった。
欲だけが先行して、理性は置き去り。カーリは指導というより、心の底から
三度目の実技指導中、私は任務を忘れて、身も心も全てカーリの
「オルセン指導官……好きです」
カーリの目が見開かれた。
驚いたような複雑な表情をしていたのは一瞬で、すぐに
「それは、演技?」
「いいえ、本気」
それからは実技指導とかこつけて、一日に何度も愛し合った。カーリの悦びは私の喜びで、私の快感はカーリの悦びだった。
こんな日がずっと続けばいい、そう思っていたところに、早くカーリを始末するようにとの指令が来た。
今まで命を奪うことなんて何とも思っていなかったのに、今は胸が押しつぶされそうなくらいに苦しい。でも、やるしかない。それがスパイだと自分に言い聞かせ、カーリを実技指導室に呼び出した。
私はカーリの頭に銃口を突き付け、カチャリと銃のハンマーを引いた。
と同時に、カーリの銃が私に向けられる。
「いつか、こんな日が来るんじゃないかと思ってたわ」
カーリの瞳が揺れる。
スパイ同士の恋なんて
「……殺して」
「…………」
目を開けると、カーリは銃を下ろしていた。
「アンナを殺せない」
「お互い、スパイ失格ですね」
任務を失敗したスパイの行く末は、川か海かの二択だ。それも殺された後だから、自分じゃ選べない。そんな未来しかないなら、このままカーリと行けるところまで行ってみるのも悪くないかもしれない。
「……逃げましょうか」
「あら、
カーリは優しく微笑んで続けた。
「まずは各国の要人を籠絡して、安全を確保しましょう」
「それ賛成です」
どちらからともなく声を立てて笑った。
私は愛する人の手を取り、希望ある明日を手に入れるための一歩を踏み出した。
最初でサイゴの逃避行 鐘絵くま @Kuma-KaneE
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