魔王様の憂鬱

逆霧@ファンタジア文庫よりデビュー

終わりの歌

 我が城の城下を見下ろすと、街のいたるところから火の手が上がっている。毎日のようにここから眺めていた美しい景色は黒い煙で霞んで見えた。恐らく街は酷いことに成っているのだろう。窓の下からは多くの怒号と怨嗟の声が聞こえてきていた。


 これで何度目だろうか。数えるのも億劫になってきている。人間たちは魔族というものをただそれだけで悪として恐れ憎む。私は何とも言えない気分の中、しばしその光景を眺めていた。



 やがて、謁見の間の重厚な扉が開かれる音が聞こえた。


 少し早かったか。本来なら玉座に座って待ち受けるのが私の決まりだったが、今回はうまく行かなかったようだ。


「魔王ノーウェル! もはやお前を守る者は居ない! 覚悟しろ!」


 部屋に入ってきたのは豪奢な鎧に身を包んだ純朴そうな青年だった。まだ鎧がしっくり来ないな。それにもう少し飾りの少ない物の方が似合うだろうに。だが、彼らを異世界から召喚し送りつけてきた人間界の王族達にも、都合というものがあるのだろう。


 それにしても随分と召喚から急いだものだ。召喚の噂から一年も経っていないじゃないか。


 そして青年と共に、3人の美しい少女たちが部屋に入ってくる。


 ふむ。1人は聖女か。見ているだけでムカムカとする、そんな禍々しいオーラが少女から広がっている。美しい子だが好きになれそうに無いな。神に愛されすぎている。他の2人も只者ではない力を感じるが、私との戦いには少々厳しいんじゃないか。

 それにしても勇者というやつはなんでいつも美しい少女たちとやって来るのだろう。少し意地悪を言いたく成ってしまう。


「よくぞ参られた、異世界より召喚されし勇者よ。私がノーウェルだよ。よろしくな」

「クッ……余裕だな、これからお前は俺に殺されるというのに」

「余裕か、まあ我は倒されるのであろう事は理解しているつもりだよ。それより、その三人の内、どの子が本命なのかが気になってね。どの娘も皆美しいじゃないか。」

「なっ! お前には関係ない!」

「フハハハ。なかなかに初心じゃないか。我としてはその禍々しいオーラを放つ聖女にはあまり幸せになってほしくないな。そこの2人から選んで欲しいところだ」


 少し聖女の顔がひきつっている。


「隼人! そいつの話を聞かないでっ! 戦いの前に私達を惑わそうとしているのよっ」

「惑わすつもりは無いぞ。さっきも言ったように我は自分の敗北は受け入れている。勇者が召喚されたということは神がこの世界の調整に関与したということだ。たかだか魔王の我ではどうすることも出来んよ」

「な……」


 それはそうだろう、悪の権現として顕在する魔王がいきなり自分の敗北を受け入れるなんて考えても居なかったんだろうな。異世界では……確かロールプレイングゲームと言ったか。召喚者は大抵そのゲームのイメージで魔王を討伐しようとする。そのゲームの中の魔王は「世界の半分をお前にやる」などと言うらしいが、我に渡せるような世界など無い。精々が今の命くらいなものだ。


「時間はまだあるだろう? 少し話をしたい。どれ。玉座に座っていいかな? 本来ならそこで君たちを待つ予定だったんだが」

「お前と話すつもりなんかないぞ。さあ、行くぞ」

「まあ待て。そんな急く物ではない。我が城下を見てみろ。もう何も残っておらぬではないか。愛する我が民も皆殺された。少しばかり彼らの冥福を祈らせてはくれないか」


 そう言いながら私は玉座にゆっくりと歩み、腰を落ち着かせる。

 ふむ。手を出してこないか。若いな。


 やはりここから勇者を眺めるのが一番だな。この椅子は我が自ら職人を選んで作らせたのだ。座り心地も上等なものだ。今日で座り納めかと思うとより感慨深いものがある。


「勇者に聖女に、後は剣士と魔法使いか? 賢者はどうした?」


そう問うと勇者の顔が曇る。


「お、お前が修斗を惑わしたんだろ! 解ってるんだ」


 シュウト……か、恐らくその名前から推測するに賢者も召喚されてきたのか。まったく最近はいつもこうだ。勇者はともかく賢者くらい人間から出せない事もないはずなのに。惑わされたという事は、ゾーネの仕事か。やつは強さは無いがそういうのには長けている。

 おそらく既に勇者らの手に掛かっているだろうが……ゾーネの働きに答えたい気持ちになるな。



 それにしても、ここから見下ろしていると不思議と奴らの顔色がよく見える。この世界で何度も魔王として勇者を迎えたんだ。分かりすぎてしまう。


「聖女がそう言ったのか?」


とたんに聖女の顔が固くなる。やはりな。大方、教会の事情を賢者に囁いたと言ったところか。聡しい物なら真実に気がついたということだろう。


「そうだ。それで仕方なくマリアとミッシェルが……お前は絶対に許さない」


おう。凄い憎しみの波動を感じる。こういうのは心地よくて好きだ。なるほど、ミッシェルか。


「マリアが聖女か? ミッシェルはどっちだ?」

「私よ。覚悟しなさい。あなたは謝っても許さない」


女剣士がそう言いながら剣を抜く。ミスリルの鈍色の光が辺りを照らす。

ふむ。色々面白くなりそうだな。


「するとそこの魔術師が賢者の代役をするというわけか? 大丈夫なのか?」

「大丈夫とは、どういうことだ?」

「我は魔王。魔神より力を授かるものだというのは聞いておろう? 賢者による破邪の法を行わず我が結界は破れない。それでも倒そうというのか?」

「ぐっ……しかし俺の聖剣なら――」

「そうだな、聖剣なら我に手傷を負わせることは出来るだろう。しかし残り2人の攻撃は無駄になるぞ? 魔法使い程度の破邪の法で我の力を無くすことは出来るとは思えん」

「くっ」


 どうやら勇者も己の不利を理解し始めたようだ。意地の悪いやり方だが、もう少し揺らしてやろう。


「そもそもお前らは、魔族というのがどういうものか知っているのか?」

「悪しき種族だろっ」

「悪か、我々はそんな自覚はまったくないのだがな。そうだな。お前の故郷の言葉で輪廻転生という言葉がある。知ってるか?」

「……ああ」

「お前たち人間や、エルフ、ドワーフ達はそういった輪廻の中で魂が回っている。人間だったものが次の生でドワーフだったりすることもあるが、生まれ変わるたびに魂は浄化されているので前世の記憶は残らない」

「な、何を言ってる」


 突然の話についていけないのは当然か、そもそも力は有っても我の話を理解できる知能があるかは、不明だが。


「魔族はその輪廻の流れに入れない魂を持つ存在だ。死んでも魂が浄化されることもなく前世の記憶を丸々持ったまま我々は産まれる。魔族が人族らより強いのはそういうのがあるからだ」

「だからなんだって言うんだ」

「浄化をされない魂は、やがて朽ちて消滅する。酷いもんだと思わないか?」

「……」

「神共の怠慢だよ。それを見かねた魔神様が我々の保護をしてくれているがな、魔神は半神であり神ではない。神ほど何でも出来るわけじゃない」

「そ、その邪神がなんだって言うんだ」

「邪神というのは神のサイドから見たものだ。お前たちから見て邪神と言うのは仕方ないとは思うがな。甚だ勘違いも良いところじゃないのか?」

「……」


 ふむ。考え込んでいるな。日本では異世界転生物と言う小説が流行っていると聞くが。その中でも召喚した人間たちがむしろ悪だったという物も割と多いらしい。この少年もそんな小説を読んだことがあるのだろうか。


「隼人。聞いちゃ駄目。そうやって私達を惑わせようとしているのよっ!」

「しかしマリア。……ほ、本当に魔族は人間たちを滅ぼそうとしているのか?」

「それはれっきとした事実よっ! 過去にいくつもの国が魔王に滅ぼされた歴史があるのよ。魔王を倒さなければ多くの人々が殺されるのっ!」

「だ、だけど……」

「修斗の事を忘れたのっ!」

「そ、そうだ。そうだな」


 素直なのは良いが、もう少し深い思考が出来ないとな。ただ利用されるだけだ。大丈夫なのか。こんなやつに任せても。少し不安に成ってきたぞ。


「良いのかね? そこの聖女とやらを信じて」

「隼人! 聞いちゃ駄目!」

「我々の侵攻も、お前らの神が、我らの魔神様の妻を奪い、拘束しているのを開放するため、という――」

「貴方は少し黙りなさい! ミシェル! ルル! 攻撃を」


 ほう。無理やり戦闘を始めて、勇者の思考する時間を作らない、か。しかし。破邪の法が行われない今、どうするつもりなんだ?



 魔法使いのルルとやらが詠唱を始める。始めから全力のようだ。最上位の詠唱は時間がかかる。その時間を作るためにミシェルが果敢に切りつけてきた。


「無駄だとわからんのか。少女よ、せめてパラディンの資格くらいは取ってくるべきだったな。聖なる力を纏わないお前の剣など届かんよ」


 せっかくの助言なのだけどな。寡黙な女剣士は俺の言葉を無視し無言で斬りかかってくる。我はせいぜい大物感を出せるように、人差し指1本で女戦士の攻撃を受ける。繰り出す斬撃がすべて指1本で受けられ、女剣士は思わず後ろに下がる。


「ミシェル! 手を緩めないで! 今剣に聖属性を付与するわっ!」


 マリアが叫ぶと同時に女戦士の剣がほのかに光を帯びる。確かに無抵抗にコレを受ければ少しは傷つきそうだが……。我はほんの少し指先に暗黒の力を集める。これで十分だろう。


 再び気勢を上げ女戦士が切りかかってくるが、同じ様に人差し指で剣を弾いていく。こんなもんだろう。勇者は何やら力を溜めているようだが、魔法使いの詠唱も終わりそうだ。


 ふむ。静電気か? 髪がピリピリし始める。


「ミシェル!」


 魔法使いの掛け声とともに女戦士は素早く後ろに下がる。パターンなんだろうな。膨れ上がる魔力の渦を感じ取り、流石に全身を暗黒の力で覆う。


 ガリッ!ガリリ!ガガガガッガ ドゴーン!!!!


 我の身を幾つもの雷が襲いかかる。暴風雨の様に電気の嵐が俺の周りを取り囲む。


「直撃だっ! やったか!」


 後ろに下がった女剣士がつぶやく。たしか、フラグと言ったか。まあ言っても言わなくとも結果は同じだが……結局雷系の最上位の魔法は我が暗黒の結界内には立ち入れない。その中で魔法が切れる前に勇者が動く。


 ほう……迷いはない。スピードも踏み込みも十分。これは我も魔剣を抜かないとならんだろう。


 ガキィィィィン!


「!!! ふっ防がれた???」

「それは防ぐだろう。我が無抵抗でやられるとでも?」


 魔法使いは、自分の魔法が完全に防がれたことに愕然としている。すぐ次を詠唱するべきなのだがな。勇者と数合打ち合うも勇者は仲間が追撃してこないことに気が付き後ろに下がる。


「はぁ。はぁ。はぁ……くっそ」

「だがなかなかいいタイミングだったぞ。破邪の法が成されていれば抵抗できぬまま死んでいただろうな」


 お気に入りの玉座もズタズタに成ってしまってる。せっかく気に入っていたのにな。職人も今回の襲撃で生き残っているかわからん。



 だんだんイライラしてきたな。



 勇者のパーティーは、全力での攻撃が完全に防がれた事に少なからず衝撃を受けているようだ。勇者がチラッと聖女の方に視線を向ける。あまり気弱なところは見せないほうが良いと思うがな。


「もう打つ手が無くなったのか? 興ざめだな……」


 あっけにとられている勇者たちに少しげんなりする。せっかく神が介入していると言うのに、これでは神も失望しているだろう。我にとってはそんな神の気持ちを想像するだけで笑いがこみ上げてくるのだがな。


 再び勇者が聖女の方に視線を向ける。作戦的なものは聖女任せなのだろうか。そのタイミングで我は女剣士に向かった。


「なっ!!!」


 我から目をそらした勇者は完全に虚を突かれていた。慌てたように必死に身を守ろうとする女剣士の剣を強引に弾く。腰の引けた剣士など物の数にもならない。魔法使いがとっさに攻撃魔法を撃ってくるが暗黒の結界を破れない魔法など避ける必要もない。


「ミッシェル!!!」


 一呼吸遅れて勇者が斬りかかってきた。もう遅いんだな。勇者の斬撃を剣で受けると、我の剣にベッタリとついていた血糊が周囲に飛び散る。


 ドタッ。


 背後では切り伏せられた女剣士の崩れ落ちる音が聞こえた。


「よくも! よくも! 貴様ぁぁああ!」


 怒りに任せ剣を振るう勇者の力は、我と対等に立ち会えるだけの物がある。必死にレベルとやらを上げてきたのだろう。


 だが。


 それだけだ。


 身体能力などは十分育っても。肝心の技術が拙い。ただ、力任せに振るう剣など何の驚異にもならない。


 賢者の事は有っただろうが、仲間の死に慣れる事は難しい。目に涙を浮かべ必死の、余裕のかけらのない表情で勇者はひたすらに撃ち込んでくる。それをすべて受け止めても我には余裕が残っていた。


 怒りで、脳内麻薬とやらが溢れていても。人間の体には限界がある。だんだん顔色が悪くなるとともに打ち込みの勢いが無くなっていく。後ろから聖女の補助魔法や回復魔法が飛ぶが、体の中の空気までは補充できない。限界を超えた苦しさの中。勇者はついに限界を迎える。


 我は無感動に息を切らす勇者を蹴り飛ばした。


「ぐぅぁああ!」


 後ろにいた聖女が勇者の体を受け止める。絶望に満ちた聖女を見下ろすのもなかなか気持ちがいい。追撃もせずにニヤリと笑みを浮かべた。



 1つ。また1つと同胞達の命が奪われている今、我はこのまま神々の調停に従うべきなのか逡巡する。歴史の中で我に返り討ちにあった勇者もそれなりには存在する。勇者を返り討ちにした時は、我を止められる存在は無くなる。同胞達が居なくなれば大したことは出来ないが、少なくとも今回の召喚に携わった国は消えてもらいたい。


 駄目だな。小奴らは。


「お前たちでは不十分だった……と、言うべきか」


 気持ち的にも、余裕が無いのだろう。我の一言にも、勇者はビクッと反応する。


「な……なんだと!」


 暗黒の力を開放し、出来損ないの勇者を見下ろす。


「マ、マリア!」

「隼人! ……少しだけ時間を作れますか? 神降ろしを使います」

「何だって? 駄目だ、マリア!」


 聖女が勇者の耳元でそっと囁く。勇者はそれを聞いて驚いた様子を見せるが、聖女は小声で勇者をなだめ、我に聞こえないように小声で諭していた。


 だが丸聞こえだ。


 ふむ……神降ろしか、たしかに破邪の法が使えない今。勝機を引き込むにはそれしか無いな。それにしてもそこまで出来るのか、聖女に関しては及第点を与えても良いかもしれんな。


「聞いて……それでなくても、私達はこいつに勝てない。勝てなければ結果は最悪のことになるわ」

「だけど……」

「一瞬……一瞬よ。私の生命エネルギーを使い切るほどはやらないから。大丈夫。コントロールできるわ」


 全て聞こえているのだが、やはりここは聞こえないふりをしてやるべきだろうな。「何をコソコソと話している!」そう言いながら我は勇者に斬りかかっていく。


 ガツィィイイン!


「させるか!」


 この短時間でも勇者の体力はだいぶ戻っているようだ。流石聖女様とでも言うべきか。

 それに、自らの命をエネルギーに変える神降ろし。愛する者にそこまでの覚悟を見せられれば、この勇者も実力以上の力を発揮するというわけだ。


「ルル! お願い! アレをっ!」


 その後ろで魔法使いが詠唱を始める。無駄だと言うのに、先程の魔法よりとっておきが有るとでも言うのか。


「はぁあっ!!!」


 すべての力を振り絞り、勇者は斬撃を繰り出してくる。それを受けならが、チラリと魔法使いの周りに現れた魔法陣を確認する。ん?


 ――あれは?


「ふはははは!」


 勇者の剣を受けながらも思わず吹き出してしまう。それに激昂した勇者が更にその勢いを増す。こいつは憐れ過ぎて、憐憫の情すら感じる。だが我は手を緩めずに次第に勇者を追い詰めていく。


「くっ。まだか!」

「頑張って! もう少し」


 目の前で勇者が少しづつ手傷を負い始めるが、聖女の神降ろしはまだ為らない。それはそうだろう。



 こいつは神など降ろすつもりは無いのだからな。



 そうしている間に、魔法使いの詠唱が終わる。


「マリアさん!」

「ルル。お願い!」


 そう言うと、聖女はそれまで出していたオーラを引っ込め魔法使いに向かって駆けていく。それと同時に魔法使いの前には、――転移陣が生じる。


「隼人。ごめんねっ」


 そして転移陣は、聖女と魔法使いを飲み込み消えていった。


「え? どうした?」


 勇者は我と斬り合いながら、後方から人の気配が消えたのに困惑している。後ろで起こった寸劇についていけない勇者に哀れみすら感じる。


「マリア? ルル? いったい……」

「ふははは。憐れ過ぎて掛ける言葉もないわ」

「……貴様! 何をした!」

「我は何もしておらんぞ。お前が足止めをして。その間に魔法使いが転移陣を構築し、2人で逃げた……それだけだ」

「な……うっ嘘だ!」

「嘘だと信じたいだろうな。だが。残念ながらお前は勇者として失格だと見られたわけだ」

「……嘘……だろ?」


 心が完全に折れたな。勇者は力なく崩れるように膝をつく。


 どうせなら更に折っておくか。


「もはやお前に勝機は無いのは理解したか? 賢者が死んだ時点でお前たちは詰んでいたのだよ」

「そんな……」

「そうだ。先程の続きを聞かせてやろう」

「続き?」

「魔族は輪廻の輪からはずれた存在だという話だ」

「……」


 勇者がうつろな目で我を見つめる。


「大方人間どもに魔王の城に帰還の術が残ってると聞いているのだろうが、異世界より召喚された人間を元の世界に返す法は無い」

「そ、そんなっ」

「そして、異世界の人間の魂は。この世界の輪廻の輪には入れない」

「……え?」

「そうだ。おまえたちが倒してきた我が部下の中にも多くのかつて勇者だった者がいる。十魔将も半分程は元勇者だぞ? そしてお前も。我に殺され、魔族として転生をするということだ」

「うっ嘘だ!」

「残念ながらそれは本当だ。どうだ? 神共のやり方というのは、そういう物だ」

「嘘だ……嘘だ!」

「ふはははは。信じる信じないなど関係ない。身をもって確かめるが良い」


 振り上げた魔剣を、そのまま勇者に振り下ろす。

 抵抗する気力も失った勇者はただ、それを見つめていた。



「……」



 我は王の間の扉を開け、部屋から出ていく。


 これから国が立ち直るにはまだ時間がかかる。

 その前に今、我が王国を我が物顔で蹂躙している人間どもに恐怖と死を与えよう。


 それが済んだら、聖女が逃げていった国を消すとしようか。

 精々魔王らしく振る舞わせてもらおう。


「くっくっく」

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