第4話 デジャヴュ
視界は暗転後直に目が醒めた。
再度転生出来る等は思わなかったが、あんな世界は真っ平ごめんである。
故に早々にリタイアしてやったのだ。
かなりの痛みを伴ったが無意味無益な五年を過ごしもう心は半分以上死んで居たので身体的な痛みを数分味わう程度でリタイア出来たのは良かったとすら思える。
何やら周りは阿鼻叫喚だったみたいだが知った事では無い。
こういうのをざまぁ系と言うのだろうか?
今更考えた所で仕方の無い事だ。
新しい人生を今度こそは普通に平凡に波風立てることなく過ごしたいものだ。
しかしやっぱり赤子からスタートなんだよなぁ
自分の視界僅かに見切れる手足は短く声を出してみてもやはりあとかうしか出ない。
「あうあうあー」
今度こそ超絶美少女に!
の夢虚しく下半身に感じる御神体。
夢は夢のままだったようだ。
どうやらとことん神は俺を男にしたいようだ。
取り敢えず居るか分からない神に向かって抗議の狼煙を上げておく。
「あうあー!」
神への抗議も無事に済ませたので先ずは現状の把握を。
一、赤子である。
ニ、見慣れた天井
以上!
実にあっさりとまとめたものの気になるのは何となく感じるこの
今更タイムリープ物なんて流行らないぞと考えていると部屋のドア越しに男性と女性の話し声が聞こえる。
「無事に産まれたのか?」
「はい。」
「それで神の色と瞳の色は?」
「髪はブロンド、瞳は○○です。」
「そうか......。 それでは後は頼む。」
「ええ、分かりました。」
何か聞いた事がある様な会話が......。
頭を過る地獄の五年間
あんな地獄はもう懲り懲りだと直に決意し舌を噛み切って死のうと一生懸命舌を噛むも全く力が足りずに甘噛状態。
駄目だこれは詰んでいる。
また無意味無益な時間をと目の前が真っ暗になると同時に扉が開かれて誰か入って来たようだ。
メイド来るなメイド来るなと目を瞑り念じていると身体が浮遊感に包まれた。
恐る恐る目を開けると其処には見知らぬ女性が映っている。
決して美人とは言えないがどうやら優しそうな雰囲気で此方を見下ろし微笑んでいる。
女性は俺を抱いたまま部屋の窓際へゆっくりと移動する。
まさかこのまま窓から投げ捨てられるかもなんて考えた自分を今は恥じたい。
女性は優しい声色で俺に語り掛けて来た。
「アストラル、綺麗でしょう。これが貴方のお父さんの領地よ。」
アストラル?
一瞬誰? と思ったがここには俺と女性の二人しか居ない。
多分俺の事だろう。
そしてこの人は多分俺の母親なのだろう。
決して美人ではない。
容姿だけで言えば前回の母親とも呼びたくない女性の方が見た目だけは整っていただろう。
それでもこの腕の中に居るのはとても落ち着く。
まるで温かな揺り籠の様に。
余計な雑念が入ったけど俺は母が言った言葉の通り眼下に視線を向ける。
夕日に照らせ光輝く一面に敷き詰められた黄金の絨毯。
風に揺れる一面の小麦畑だ。
人の姿は一切見えない。
ただ赤子ながらに見ているこの光景を俺は一生忘れないでおこうと目に焼き付ける。
まだこの先どうなるかは分からないけど、
前回よりは酷い事にはならないだろうという直感めいた物を感じる。
どうやら再転生は今の所は順調なようだ。
この景色をいつまでも見ていたい気にとらわれるが、安心感からか段々瞼が重くなってきた。
どうやら赤子の体力の限界らしい。
瞼を閉じようとした時に金色の絨毯の片隅に何やら巨大な影が見えた様な気がするがきっときのせいだろう。
暖かい揺り籠の中俺はそのまま瞼を閉じ身体を預け意識を手放しだった。
勿論神様に後程ごめんなさいしたのはここだけの話だ。
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