第6話 大立ち回り
大絡繰『八岐大蛇』に向かうは全ての権能を否定する倶利伽羅。大鎧刀を構え列車の背中を駆ける。素戔嗚の砲撃は倶利伽羅の位置を気にせず放たれるがそれも騙し絵の一環だ。協力関係ではなく。あくまで敵が同じだけ。この列車を御せれば、日本縦断の権利が手に入る。ミツヒデに対する策としては上々だ。イエヤスの月読は前線には出ていていないが。まずは前哨戦。大蛇神を狩って、武勲を立てる。風来坊は天下取りの一歩を踏み出す。この時代変転の呪いを受けてなお、その気概は衰えない。
大蛇の背を駆ける倶利伽羅、素戔嗚の砲撃を躱し、首元へと迫る。一つの首は狩った。残り七つ首。しかし、四方八方から迫る顎をいなし、躱し、斬りかかる。大上段からの斬り下げ。蛇の頭一つをかち割る。しかし、倶利伽羅の手足に顎が食い込む。
しかし。キチョウが大蛇の体内に満ちる瘴気を炉に込めて、気炎万丈を発動する。燃え上がる倶利伽羅は蛇の顎を振り払う。焦げる蛇頭。そこにヒデヨシの砲撃が撃ち抜き、残る首は六つ。
八岐大蛇は大水流を召喚する。全てを押し流し、殲滅するつもりだ。しかし。倶利伽羅は権能を否定する。権能によって召喚された水流は倶利伽羅を避けて行く。素戔嗚は水流を大盾で防ぎながら、砲撃を連射する。それが牽制になった。隙が生まれた。水流を放った首の一つががら空きになった。横一閃、首を断ち切り。倶利伽羅は大蛇の屋根に着地する。ここまでは順調しかし。残り五つ。
五つ首が連携する、一つが迫り、一つが様子見、一つが後ろに回り、一つが水流を牽制に放ち、そして本命、五首目が倶利伽羅を喰らわんと大顎を目一杯開く。倶利伽羅はその大顎に飛び込んだ。その腹の内から首が爆ぜる。これで四つ。と思いきや。
残る四つ首から異様な妖気が迸る。残る頭無しの首が鎌首をもたげる。不死の神聖、八つ首全てを斬り捨てなければならない。これは権能ではなく特性だ。
四つ首を相手に四方から囲まれ、逃げ場を失い、首だけになった四つ首に絡め取られる倶利伽羅。そこに素戔嗚のノブナガを巻き込む砲撃が飛んで来る。これは共同戦線ではない。騙し絵だ。互いの攻撃が当たろうと協定違反とはならない。そもそも協定など結んでいない。同じ敵を討つ。ただそれだけだ。砲撃により、残るは三つ首。
三つ首と頭無しの五つ首、倶利伽羅は二本目の刀を抜刀する。赤熱する剛剣。それは神剣の類。『業火』の銘を受けた者。三つ首をまとめて斬り捨てる。しかし切っ先が浅い。斬り落とすまでにいたらない。首での突進、単純な質量攻撃。しかしそれが一番効く。性能勝負に持ち込む倶利伽羅はそう言った真っ向勝負で出力負けする可能性がある。現に天照に性能差で負けた。素戔嗚が大盾を捨て刀を構え突撃してくる。首一つを突き刺して地面へ縫い付け、後方に流れて行く。
そう列車は前へと進んでいる。景色は流れ、世界は進む。残り二つ首。倶利伽羅は業火をと大鎧刀を構え、飛び掛かる。先ほど入れた傷口へとさらに深く食い込む切っ先。キチョウが瘴気を再び炉に込める。気炎万丈が業火に宿る。そのまま燃え上がる炎の剣は首を焼き尽くし、残るは一つ首となった。
一つ首は禍々しい角を生やし、逆さ鱗を主張している。そこにあえて狙いを定める。そして大鎧刀を投げた。逆鱗に突き刺さり。八岐大蛇は激昂する。しかし、刀が突き刺さった時点で、決着は着いている。爆ぜろ。とノブナガが唱えた。大鎧刀が爆発し最後の一つ首が失われ、列車が止まる。上空がアヅチが迫る。倶利伽羅を回収しに来たのだ。
これにて八岐大蛇討伐は達成された。大陸縦断列車はノブナガの手に落ちた。風来坊はさらに手を伸ばす。次に目指すはイエヤスの月読。天照攻略の一手である。
大絡繰戦国絵巻 亜未田久志 @abky-6102
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大絡繰戦国絵巻の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます