第42話 TRY AND ...
狙撃銃による狙撃を試してみた。しかし、確実にヒットした瞬間をとらえたものの、その銃弾が皮膚を貫通することはなく、それどころか炎による遠距離攻撃という反撃をもらった。リスクがリターンに相応でないために、狙撃はいったん没となった。
ヘクシーに移動速度バフを与え、回避のみに集中させたうえでどこまで接近できるかも確かめた。その結果、鎖による束縛範囲、半円を描くその範囲外であれば、思いのほか楽に接近できることがわかる。奴の炎による遠距離攻撃には予備動作が必要らしく、それさえしっかりと把握しておけば回避できるとは、ヘクシーの弁である。
ヘクシーによって回避可能性が証明された。であるならば、ヘクシーには回避を優先させ、病の風と誘いの吐息を散布し続けるという作戦を思いつく。これにより、どちらかと言えばデバフ的な側面を持つ攻撃が通用するのか確かめられ、あわよくば討伐、登録すら可能。ヘクシーを信頼できるならば、非常にいい作戦と言えた。
その結果、ヘクシーはその任を全うした。そして、セムもまたその能力を発揮したと言えよう。回避をことごとく成功させ、無傷で睡眠状態へ誘うという戦果を与えた彼らであったが、しかし世界の声は聞こえることはなかった。
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「…ん?」
明らかに、奴は今睡眠状態にある。鎖の束縛範囲内に入っても、何ならヘクシーに剣でつつかせてみても反応はない。しかし、登録することはできないのはどうしてだろうか……。混乱の最中にも時は進む。なれば、ひとまずは距離をとるしかないだろうか。
「これはどういうことだ…?」
この事態は、能力という前提を揺らがしかねない。原因を特定しなければならんだろう。
「カテゴリが存在しないならば、登録できないということもあり得るか…?それか、あの睡眠がブラフ…?いやっ…。」
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仮説をいくつも考えていく中で、最もしっくりと来て、最も状況に即していて、最も検証が簡単そうなもの。それを検証するために、まずは先ほどと同様にヘクシーたちに睡眠状態を作ってもらう。検証回数が増えるほど彼らの負担が増え、奴の試行回数も増える。なんとか早めに原因を特定したいものだ。
「さて…。オルデラを顕現だ。」
オルデラは、その能力によって確実に致命傷を与えられる。それが、睡眠状態の敵であればなおさらである。しかし、オルデラは顕現後、じっとイヌのモンスターを凝視し、そしてすっと首を横に振った。
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「やはりか…。」
今回予想した仮設とは、『殺害可能状態にない』ということ。俺の持つあらゆる武器、手段をもってしても奴を殺すことが叶わなのならば、なるほど確かに、睡眠状態であろうと殺害可能ではないだろう。そして、この仮説が正しいという仮定は、奴を登録も、殺害もできないという前提を作ることに他ならない。
「そうなると、ヴァルハラはひとまず後回しだな。」
門兵すら打倒できない領域に飛び込むほど、愚かではないつもりではある。ヴァルハラは未知を内包する興味の対象ではあるが、考えるべきことはまだまだある。例えば、昇華について。昇華によって戦力としてより強力になったヘクシーという例があるため、昇華の条件はぜひ突き止めておきたい物の一つである。
昇華について実験することは、副次的にあのモンスターに通じる攻撃手段の確保にもつながる。それを考えれば、実験するメリットは十二分であると言える。
あとは、マミーを登録するというのもしておきたいことである。リビングデッドの中で唯一一体しか遭遇していないため、運が悪いのか、相当稀少なのかは知らないが、リビングデッドの中で一番魅力を感じる対象だから。
「なら、ひとまずはヴァルハラからは遠ざかる方向に進むとしようか。」
―――――あとがき
今回は少し短くなってしまいました…。時間的な制限もあったのですが、内容的な区切りにはいいので、無理に冗長な分にするよりかは良かったとは思っています。
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