第38話 疫病の騎士
―――リビングデッドのうち、少なくともスケルトンに関しては、勝てる可能性が確定した。だからこそ、今俺はスケルトン狩りを行っている。
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リビングデッドは、その能力情報から時間経過で強くなることが確定した。その特性の成長度如何によっては登録も視野に入れておきたいし、強くなる可能性があるモンスターを放置してしまえばそれだけ動きにくくなってしまうというのもある。あとは、その強さの比較を行うことで、それが生まれつきの強さの差なのか、それともダンジョンが生まれてから発見されるまでに成長し続けた差なのかは分からないが、そう言った可能性があるのかないのか確かめる事は出来る。そういった意味もあって、今俺はヘクシーを駆けらせているわけである。
ヘクシーに跨り、移動する。その恩恵を受けるのは初めてのことになるだろうか。敵としての脅威は知りつつも、味方として、その恩恵を理解してはいなかったと思い知るほどその移動性能は高く、さらには接敵後に余計な操作なく攻撃に移れることも相まって、さながら戦車の様相を呈していると言えた。
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さらにスケルトンを倒すこと数度。合計すると、おそらく十数体のスケルトンを倒した。そして、おそらく二十度ほど。視界内には少なくともスケルトンが存在しなくなった時、それは起こった。倒したはずのスケルトンが再び一つの構造を作り、より強力そうな一体のスケルトンに変化する。驚き、攻撃を仕掛けようとするも、ヘクシーがなぜかカードに戻ってしまい、空中に放り投げられてしまう。臀部から地に落ち、下半身に力が入らなくなっている間にも変化は進み、次はカードからあふれ出した光によって視界が消える。ようやく通常の戦闘力を取り戻したころには、元に戻った一つのカードが手元にあるのみだった。
『登録モンスターの昇華を確認。同時に、カテゴリの更新を確認しました。登録カードの変更が可能です。変更後のカテゴリは、カテゴリ2【不死種】です。』
混乱の最中に落とされた、さらなる混乱の種。何が何だか分からなくなった彼は、思考を放棄したイエスマンとなった。
「……する。」
『登録カードの変更を確認。固有名称ヘクシーは、
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種族名:プレイグ(2属)
固有名称:ヘクシー
カテゴリ:【不死種(2)】
・薄雪の系譜
薄雪馬の持つ能力をすべて使用可能。
・疫病の騎士
疫病を司る騎士を具現化する。その騎士が剣をふるえば周囲に病の風が吹き、その剣で貫けば敵は尽く感染者となる。病の風を吸い込んだ者は患者となり、刺し貫かれた者は病原母体となる。病原母体は、刺し貫かれたものの外相を負わず、症状もない。しかし、その体内では病原体が生産され続け、その息は微弱な病の風となる。病原体を生産し続けるため、必要なエネルギー量は増加する。
*プレイグ
疫病を司る、人馬一体のモンスター。その疫病は、致死率はゼロに近く、時間とともに完治するものの、その間は発熱と、移動制限の状態異常が付与される。移動を制限され、発熱にうなされる患者はもはや抵抗の余地がなく、その患者を疫病の剣ではない、ただ物理的に鋭いだけの剣で刺して回るのがプレイグの基本戦術である。移動制限の状態異常から復帰する手段を持つか、発症までの期間に致命傷を与えられるのであれば討伐は可能。しかし、馬型モンスターから昇華したプレイグであれば移動性能が、アンデッド系モンスターから昇華したモンスターであれば戦闘能力が、それぞれ高くなるため、非常に困難となる。
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「はぁ~。」
言葉が出てこない。うれしい限りの戦果なのだが、期待を大きく超ると、人は言葉に詰まるものなのかもしれない。そんなことを考えながら現実から逃避してみれば、薄暗いこの階層が平和に見えた。
―――――あとがき
こんにちは。今回遂に、『昇華』が登場しました。これにより、不死種、既死種、未死種の三種がすべて登場したことになります。補足として、不死種は他のカテゴリを持たず、これは蟲種にも同様です。未死種と既死種は同時に持つことがないため、カテゴリの積の最少は15となります。これによって、カテゴリの積を見ればどのカテゴリを持つか特定できるため、モンスターにはカテゴリの積による属表記をつけています。これは、作者が頑張って考えた部分です。
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