第28話 5月1日
蜻蛉のモンスター。現在相対しているそのモンスターは、その速度を利用した羽による斬撃をメインウェポンとする。しかしながら、その動きを正確にとらえられ、羽ではなく頭を正確に狙って防御された場合、その速度はそのまま敵の攻撃力に加算される。さすがに一度や二度頭から障害物にぶつかった程度で動けなくなる程脆くはないが、それでも、いつかはその身に敗北が降ってくることは、誰の目にも明らかであった。
もはやそのモンスターは哀れなる被害者へとその存在を変えた。彼のモンスターにできることなどまったくと言っていいほど存在しなかった。彼もまた、バクと同じく一芸に秀でた、いや、特化したモンスターであるがゆえに。
しかし彼のモンスターにとって不幸であったのは、敵の目的が殺害でも、防衛でもなかったことだろう。彼の敵は、彼の捕獲を最大戦果と定義していた。そうである以上、彼の行く手を阻むその盾は、敵を守るだけでなく、彼の闘争を防ぐという役割も全うする。かつて彼の狩場であったその領域は、今では彼を封じる牢獄となった。
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『殺害可能状態にあるモンスターの存在を確認。登録しますか?対象は、カテゴリ1【蟲種】に該当。最適なスートは、
不慣れで不格好ながらも、なんとか盾を操ること数十分。体感的には百数十分の追い込み漁の末、遂に敵モンスターは力尽きた。モンスターにも心というものがあるのかは不明だが、自身にとって良い未来が見えない状況というものは苦しいものだ。俺に頭を押さえられ、もがくほどダメージが蓄積する状況で、よくもここまで粘ったものだと称える気持ちが芽生えるほどには、奴は最後まであがいた。
「登録する。カードは、
クラブのエースは、取り回しもよく、使い勝手もいいナイフだった。
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種族名:メーデーフライ(1属)
固有名称:設定可能
カテゴリ:【蟲種(1)】
・
非常に硬質な羽を、飛行するための振動とは別に微細に振動させ、その切れ味を高める。
・蜻蛉の躰
複眼を持ち、高速機動可能な羽を持つ。人差し指ほどの大きさから人の前腕ほどの大きさまでそのサイズを変えることができるが、その質量は常に一定である。
*メーデーフライ
体のサイズを変えられる、蜻蛉のような外見のモンスター。その機動力と、名刀にも劣らぬ切れ味を誇る羽を使い、あらゆる敵を切り裂く。その姿を見た者は等しく
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「…名前は……。いや、今すべきはこれじゃない。全カードを送還。マーチ、ハートの近衛兵を顕現。メーデーフライとセムもだ。」
いつも通り顕現する面々に告げる。周囲の警戒をせよ、と。その言葉を皮切りに緊張の糸が切れたのか、彼はそのまま深い眠りについた。
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「おまえの名前は、カゲロウにする。」
目が覚めた後は、そのまま急ぎ足で拠点に帰った。その道中で熟考した名前を、拠点で改めて設定する。トンボの体を持ちながら、決してトンボではない存在。驚異的な速度で、そこにいないのかと思うほどその存在を捉えさせない者。奴改め、カゲロウのことをよく表した良い名だと、我ながら思う。こうして、俺の手札がまた一つ増え、同時に減った。
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「蟲種、蟲種かぁ。」
マーチたちとカゲロウ警戒に当て、ある程度の安全を確保した拠点で思案する。その対象は、もちろんカテゴリ1、【蟲種】である。
「カテゴリ1が判明したのは非常にうれしいが、蟲ってなんだ?虫ではなく蟲。何らかの含みがあると考える方が妥当だが。しかしカゲロウ、メーデーフライがカテゴリ1だから、昆虫系、虫っぽい奴らはカテゴリ1だと考えられそうか。ならば、虫系のモンスターと戦うのは、登録目的でなければメリットが薄いか…?いや、情報のアドバンテージは大きいか。
あと分かっていないカテゴリは、2、3、6、8、9、K かな?【王種♂(K?)】と【既死種(?)】を入れれば、あと四つか。楽しみだなぁ。」
停滞を嫌って行った遠征。大きすぎる危険を背負うことになった遠征ではあったが、十分なほどの成果は得た。カゲロウは、大きな戦力となってくれるだろう。敵対したからこそ身にしみて解る。こうして今日も、定義すら怪しくなった一日が終わる。
―――――あとがき
こんにちは。今回で、ようやくカテゴリ1までたどり着きました。あと6つのカテゴリは、次の階層あたりまでには出せたらいいなと思っています。
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