第20話 かくれんぼ
「まずいな……。まさか、殺すことが悪手となるモンスターとは。奴が何か別のモンスターの手先で、情報収集をしているところまでは考えたんだが。まあ、ごちっていても仕方があるまい。」
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手長の長に、同胞に、志を同じくするすべての生物に、その命を賭した情報は届けられる。相対する敵が用いた手段は、超火力単発武器による狙撃。それが映像イメージによって、寸分の狂いなく伝えられる。その情報から導かれる結論としては、敵は対個において絶対的な力を持つが、対軍においてはその限りではないという事実。それは、犠牲を良しとするならば、決して倒せぬ敵ではないという自信となる。その事実が幸か不幸か。それは、未来において確定する、結果のみぞ知ることである。
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「ひとまずは場所を移動するか。」
敵に与えた情報は、更新しなければ敵にとって絶対的なアドバンテージとなる。位置情報、武器情報、俺の能力の情報、…。その中で最も精度が高く、最も更新しやすい情報が、位置情報である。あとは、敵に与えていない情報が敵戦術を狂わすほどの価値があるか。その如何によっては、このディスアドバンテージは覆り得る。少なくとも、この盤面では未だ勝負は決してはいなかった。
できるだけはやく歩き、位置を変える。ただ位置を変えるだけならば走るのもいいが、周辺環境を観察し、戦いに組み込めそうなものがないか吟味する。同時に、手長どもに悪用されそうな枝から距離を取り、遭遇した際の退路を想定する。そうして、ある程度距離を取ったところで、太めの木に身を隠し、気持ちばかりの潜伏をした。
「敵に位置を捕捉され、その情報を親玉にもっていかれたら負けだ。いや、敵の数次第ではさばききれるかもしれんが。そうなれば、ここで選ぶべきは逃走や迎撃ではなく、むしろ
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『アビリティの発動を受領。phase 1開始。全カードの使用停止を確認。phase 2開始。ディール。』
使用不可能になったカードの束から、配られたカードが手元に飛来する。今回の手札は、
「
『アクションを確認。phase 3開始。ディール。』
この手札如何によって、俺の命運が変わる。最悪、任意での能力停止を行い、自分の選んだカード群で戦うことになろうが、それでは21の制限が重すぎる。果たして、帰って来たのは、
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だった。
…敢えて言おう。大当たりだ。これらのカードに割り当てられた能力、武器はそれぞれ、
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弓。矢は顕現することに補充され、その数は常に20である。矢を回収しない限り、20回の攻撃回数制限があるが、その隠密性は並ぶものがない。弓を引くために必要な力は顕現時の能力者の身体状況に左右され、それ即ち、攻撃力もそれに左右されるということである。
・
無音で移動できるようになる。その時間は4時間だが、
・
身体強化。脳細胞からつま先の筋肉に至るまで、全身のあらゆる機能を微強化する。一つ一つの効果は微小なれど、それらは相乗効果を生み、大きな一つの力となる。
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貨幣として働く。使用することで、別スートの10に交換することが可能。また、遠距離攻撃たる♠の弾など、カードに登録してある消耗品であれば交換可能。
・
カードに登録されているものにのみ効果があり、そのものの攻撃力をあげる。例えば銃弾であれば貫通力、ナイフであれば切れ味と、能力者にとっての攻撃力が上昇するということである。
あたりもあたり。大当たりもいい所である。カードだけを見てもあたりなのに加え、
『ワンペアを確認。攻撃力の微増を付与。アンティ:ALL IN。 phase 4開始。show-down。』
そう。ワンペアがある。これで負けるならばそれまでの男。そう納得できる手札でよかった。これで俺は、大手を振って死地にも赴ける。
―――――さぁ。
―――――あとがき
こんにちは。そろそろ今年が終わりますね。年末年始は予定通りの投稿ができないことがあるかもしれませんが、ご了承いただけると幸いです。
17話、『屈折する現実』にて、同じ文章が無意味に連続しているという指摘をいただいたため、修正しました。その際、改めて読み返したところ、不自然だなと感じる文章が一部ありましたので、同様に修正いたしました。
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