第10話 検証段階
近衛の矜持は、つまりマーチを顕現している状態であれば、
しかし、ついに選択の時が来たことも事実である。つまりは、
つまりは、セムと
「セム。俺の指示なしに、カードに戻ることは可能か。」
可能であれば、俺が指示すら出せない状態になっても、マーチがカードに戻ることで
「なるほど、可能なのか。……セムを顕現する。」
セムが俺の指示なしにカードへと還ったことで、俺にとっては幸いなことに、
「マーチを顕現。同時に、ハートの近衛兵三体を顕現。」
それと同時に、ハートの女王の名を戴く黒のカナリアが、近衛を伴って顕現する。名前に不釣り合いなその姿を見て、俺は少し微笑ましくなった。
「マーチ。お前の仕事は近衛による先行、および俺の護衛だ。任せていいか?」
「ピピッ!」
「そうか。では頼んだ。それと、もしかりに俺が何らかの状態異常を被り、自分たちだけで状況を改善することが困難な場合、速やかにカードへ還るように。できるな?」
「ピュイッ」
マーチはその翼で敬礼を模したポーズを取ると、そのまま俺の肩に
ここで一つ、差し迫った問題に触れよう。持ってきた食事が、すでに半分を切った。水もまた、必要最小限にしかとってはいないが、半分ほどに減ってしまっている。食料の安定供給が欲しい。水源が欲しい。それが、今の状況である。
しかし、食料については、今できる実験がある。つまりは、モンスターの可食性が、ラビウルフの死体をもって確かめられるのだ。仲間となったモンスターの元同僚を喰らうのは何とも気が引ける事ではあったが、残念ながらダンジョンでは、道徳は普遍の法とはなりえなかった。
「ここで、モンスターが食べられるのか実験しようと思う。今から食べてみるから、体調の変化を確認する意味も込めてここに二日ほど留まる。分かった?」
「ピィッ!」
「よし。じゃあ、もし食べられそうになかったら、マーチを送還して
ラビウルフの生肉を、手に持った
ただ、いくら冒険症候群たる彼であっても、命綱なしで損な賭けはしない。
噛り付いたその肉は、筋が残って嚙み切れず、風味も独特で、お世辞にもうまいとは言えない代物。ただ、あくまでその味を表現するのであれば、それは確かに冒険の味がした。
―――――あとがき
こんにちは、
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