第7話 被包囲殲滅作戦
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種族名:ゴブリン小隊(20属)
カテゴリ:【未死種(4)】【悪業種(5)】
・三位一体
思考の共有。ただし、それぞれに意思決定器官があるため、最終判断は個々に下される。
*ゴブリン小隊
三体でありながら一体であり、しかし彼らはやはり三体なのだ。
思考の共有による連携は熟練の域に達しており、しかしその運動能力は並であるために、脅威度は低い。
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「まじか……。」
正直言って、予想外も良い所だ。感情論的には食いたくなくとも、モンスターの死体は食用可能か調べるいい機会だったし、セムが食事を可能かという最終確認にも使えたかもしれないのに。まあ、証拠のない謎のコミュニケーション能力に従えば、セムは食事しないのだが。
「三体で一体分に換算されるなら、一考の価値ぐらいはあったかもなぁ。しかし、解説によると一体で完結するタイプのゴブリンもいそうだし…。難しいな!」
なんだかんだ言って、楽しむために強引にダンジョンに入っていくような人間である以上、嫌いなものを登録するとは思えないのだが。
「しかし、セムの能力はやはり使い勝手がいいな。俺の能力との相性もいい。ただ、俺自身そうだったように、催眠が聞かない相手に対する有効打のなさがネックか。しかし、そこは俺が手札を増やすことでも対策できるし。よしっ。こういうのを後の祭りというんだ。セム。行くぞ!」
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ダンジョンを行くとき、セムは俺の少し後ろをついてくる。それは、自身の役割が索敵や防御にはなく、徹底して自身の安全を確保することが最終的には俺のためになると、そう考えているからである。と、俺は思っている。であるから、移動中のセムの役割は、専ら話を聞くことである。
「物語だとさ、やっぱ最初の敵はゴブリンなわけさ。まぁ、俺はそんなに気にしてないよ?だけどさ、やっぱゴブリンなの。俺もね、なんでゴブリンなんだろうって考えたことあるんだけどさ。やっぱりあからさまな敵で、なおかつ単体では弱いモンスターってなかなかいないでしょ?後々ゴブリンの群れを圧倒することで成長を感じることもできるしね。そう考えると、やっぱ最初はゴブリンであるべきだなぁと思うのよ。いやいや。気にしてはないんだけどね?……」
文字に起こせば気にしているとしか思えないそのセリフを吐いた少年は、弾んだ声色と緩んだ口元を鑑みるに、ゴブリンとの接触に相当に興奮したのだろう。ゆえに、周囲の警戒が少し不十分になっていたことも、少し声が大きすぎたことも仕方がないことなのかもしれない。無論、今この状況を打破できればの話だが。
気が付くと、通路の奥にはいくつもの輝く目が見える。反射的に退路である逆側を見れば、そこにもやはり無数の目があった。
「まずいな…。」
セムが戦闘能力を持たないことを踏まえれば、この状況で戦えるのは自分ひとり。セムの能力が突破口となることを考えれば、ひとりでセムの護衛までこなさねばいけないだろう。今の状況は、いうなればわかりやすくピンチであった。
「
現在使用しているカードは、1、1、7。残りは12。ちょうど
つまり、一度セムが無差別攻撃を始めるほど接近を許してしまえば、
セムが一方に吐息を開始し、同時に俺はもう片側を迎え撃つ。前提条件は、片側の敵の撃破。勝利条件は、敵の殲滅だ。
―――――あとがき
セムの能力は、序盤にふさわしくないほど破格であります。しかし、その一方でしっかりとデメリットも存在し、吐息の散布範囲は、中心角30度ほどの扇型となります。つまり、多方向からの攻撃に非常に弱くなっています。また、距離が離れるほどその効果は減少するため、戦闘能力を持たないにもかかわらず、至近距離でこそ真価を発揮する、ジレンマを孕んだ能力であるとも言えます。
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