第3話 夢の中へ
これが僕の
今日、僕は生まれ変わったんだ。そんな実感が、時間と共に膨れ上がる。ただ主人公に、冒険譚に憧れた少年Aはもういない。憧憬に向かって走るために必要なものは、十分すぎるほど持っている。あとは、臆することなく飛び込むだけだ。死ぬかもしれない。痛い目にも、怖い目にも合うだろう。いいじゃないか。僕は、いや、俺は、そこに飛び込まなくては、俺でなくなる。
すぐそこだ。たった数十歩。たった数十歩先に、俺の
一時間ごとに入れ替わる自衛隊員を観察しながら、じっと体力を温存する。幸か不幸かどの隊員も職務に忠実で、警戒を絶やすことはない。言い換えると、こっそり抜け出す隙もない。ここが完全に安全ならば、気絶でもさせて抜け出すのも手だが、その間に危険が襲ってきたら寝覚めが悪いし、何より俺は気絶させる方法など知らない。そうして、不可思議な均衡状態が維持したまま、早くも三日が過ぎようとしていた……。
******
『自動発動:
急激に、意識が覚醒する。睡眠への名残も、いつもと違って糸を引くことはなかった。それは、きっと
それは、あえて動物に例えるというならばバクになるだろうか。しかし、その体躯は小さく、人の頭ほどしかない。前足だけが長く、後ろ脚は存在せず、指は三本ずつしか存在せず。そして何より、それは宙に浮いていた。
驚きは大きく、しかし、身体はよく動いた。横に飛び出しながら相手を観察し、心と体を臨戦体制に移行する。どうやら奴もこちらが起きるとは思っていなかったらしい。いきなり襲い掛かってくるということはなかった。
「ちくしょう。まだカードごとの使い方の精査も終わっていないのに…。だが、ここだ。いまだ。俺はついに、機会を得たっ!!!」
戦闘に発展するであろうという展望。戦い方を確立し得ていないという不安点。冒険への切符を得た高揚。その全ては一つとなって、ただ、戦意へと変わった。
「【
『アビリティの発動を受領。phase1開始。全カードの使用停止を確認。phase2開始。ディール。』
そして、五枚のカードが眼前に現れる。それぞれ、
スペードのAはかなりいい。クイーンも一枚は欲しかったところだ。リングの3は返すとして…。
「
『アクションを確認。phase 3 開始。ディール。』
帰って来たのは、
『スリーカードを確認。戦闘終了まで、被ダメージ一割減、与ダメージ一割増を付与。アンティ:ALL IN。phase 4開始。show-down。』
アナウンスの終了と共に戦闘が開始する。どうやら敵は純粋な戦闘能力は低いらしく、鼻からどう考えても悪影響を与えてきそうな息を吐きだす。それに対し、俺は
スペードに割り当てられた武器は銃の類。その中でもAは、ポーカーにおける最強のカード。戦いになれていない今の俺にとってはぜひとも引き当てたいカードだったと言えた。
割り当てられた武器、能力
-A to 10-
♠(スペード):遠距離武器
♥(ハート):回復薬
♦(ダイヤ):交換可能
♣(クラブ):近距離武器
◉(リング):防具
▲(グレー):デバフ効果
✚(クロス):バフ効果
-J to K-
J(ジャック):対応するキングに対し、出口となる。
Q(クイーン):能力者に不利益となる状態の改善
K(キング):対応するジャックに対し、入り口となる。
―――――あとがき
さて、今回、スート一覧が登場しました。一般的な(というかおそらく全ての)トランプは4種類のスートで構成されていますが、ここではあえて7種類登場させました。スートの強さは、♠>♥>♦>♣、◉>▲>✚>◉です。
トランプは、その全ての数字を足すと364、ジョーカーを1として365になるという美しい性質を持っていますが、364の因数は4、7、13であるため、ここではトランプでは代表的でない7を使用したかったという背景があります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます