第2話 僕だけの遊戯
足場に乗ると、案内役の女性が合図を出した。同時に、足場がゆっくりと下降する。下は、あらゆる光を吸収する深淵。心拍は大きくなり、呼吸は速く、短くなっていく。それが恐怖によるものではないと、吊り上がった口角だけが物語っていた。
ある点を通過すると、濡れた服を着たような違和感が襲ってきた。同時に、それまで見えなかった光が足元に見えた。案内によると、あの地点がダンジョンの入り口という風に政府では定義しているらしい。なるほど確かに、目に見える変化はなくとも、肌で、目で、耳で、鼻で、舌で、五感の全てで、まるで異世界にでも来たような感覚を感じた。
永遠に続くかと思われた垂直下降であったが、実際には一分程度で最低点へとたどり着いた。湧き上がる興味と興奮に身を任せ、目につくものすべてを触っていると、背後から声が聞こえた。
「君が、登録者1号か。名は?」
「登録番号00001、佐藤英雄です。」
「では、一応、上でも聞いたとは思うが、説明をしておこう。そこの赤い線よりもこちら側に侵入してきた生物は今のところ発見されていない。よって、その赤い線より内側を政府は安全地域と決定した。しかし、一年ほどで安全が証明できるとは、誰も思っていない。一時間ごとに交代で我々自衛隊が警備をするから、君はこの範囲で自由にしてもらって構わない。質問は?」
「特には。」
「では、この一週間何度か顔を合わせるだろう、伊達だ。よろしく。」
「こちらこそ。」
地上ではワクワクとドキドキで聞き逃してしまった説明だったが、今回もまたよく聞いけなかった。それ以上に興味のある声が、どこからか聞こえてきたのだから。
『
******
壁に寄りかかるように座り込み、思案を重ねてみる。天才でもなければ学位もない僕に何がわかるわけでもないだろうが。
『これが、政府の言っていた変化……?ならば、少なくとも一人、この声を聴いた人がいるのか?条件は?いや、それを知るために人を募っているのか。確かに、普通の人なら気色の悪い変化ではあるが……。
ただ、俺が発現したなら伊達さんも何らかの
脳内会議の結果、さっきの声のことはしばらく黙っていることにした。具体的には、話しても自由が保障されることが確定するか、管理される以上のメリットが現れるまでだ。そして、今後の行動方針を決定したことで、火急のタスクは完了した。つまり、ここからは、
脳内で、
ジョーカーが描かれていたはずのカードには、既に笑うピエロの絵柄はなく、そこには、いつの間にか僕の
【
・
非登録状態にあるカードに生物やアイテムを登録する。登録したアイテムは成長が可能となり、生物は昇華が可能になる。
‐条件-
アイテムであれば所有権を持つ。
生物であれば殺害可能状態にあるか服従状態にある。かつ、カードと登録する生物のカテゴリが一致する。
・
非登録状態にあるカードには、ランダムな武器、または効果が登録されている。武器は能力者の知識体系から抽選される。
・
カードは同時に合計21になるまで使用可能。
・
ポーカーを宣言すると、すべてのカードが使用不可状態に移行する。その後、五枚のカードが使用可能になり、能動的にカードを使用不可状態に戻せば、一度だけ対応する枚数分のカードが新たに使用可能になる。抽選には使用不可にしたカードは含まれない。その後、使用可能状態である五枚のカードの役に応じ、効果が発動する。効果は、能動的に解除するか発動時に敵と認識していた生物を殺害すると停止する。
‐条件‐
敵対生物を認識する。
前回、
―――――あとがき
この小説では、話の最後にあとがきを書くことがあります。無視してもストーリー進行に影響はしません。
この話で出てきた、能動的な解除とは、仮称世界の声による提案を受けないという意味です。
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