幕間:ある空巣の日記 2001年 ①
2001年
6月5日
遊びすぎた。『タックス・マン』の連中に貰った金はもう無い。働こう。
6月28日
ゲーム用の筐体を盗んだ。あまり金にならなかった。重いだけだ。しかし、結婚指輪を盗んでいくのも気が引けたし、他に目ぼしいものも無かったのだ。
その家の一人息子は受験生であったようなので、貰っていったのだ。悪いことはしていない。俺は受験生の味方だ。
7月16日
今日は映画館に行った。『死刑台のエレベーター』を見た。オシャレな映画には財布を膨らました連中が来るものだ。ポケットいっぱい。ホクホクだ。
7月22日
質屋のオヤジと焼き鳥を食べに行った。俺は砂肝が好きだ。カラスみたいな味がする。いや、逆か。カラスが砂肝の味なのだ。
7月24日
今日、オヤジ狩りにあった。随分と高そうな服を着た連中で、手に手にバットや金属パイプ。バタフライナイフ。角材。まあ、お決まりの代物を片っ端から握りしめていたわけだ。
世も末だな。本当に。
連中は金が目的じゃない。スリルが目的だ。金なんて唸るほど持ってるわけだからな。銃刀法が有名無実
五人いた。全身ユ◯クロ製品の俺一人対高級チンピラ五人組。勝負は見えていた。だが、俺も伊達にALSECから逃げ回ってきていない。奥の手ぐらい用意しておく物だ。
ALSECから擦った拳銃だ。質屋のオヤジに尋ねたところ、Glock17というらしい。映画でよく見るヤツだ。
オヤジからは製造番号を消すから貸せ‼︎と、怒鳴られた。見つかった時、盗品とバレたら連中の対応が厳しくなるからだそうだ。
どっちみち、捕まれば海で魚とコンニチハすることになると思うのだが、有難い気遣いであるのは間違いない。
まあ、かくして俺は拳銃の力によって危機を脱したわけだ。レンコン銃じゃない銃の安全装置の外し方は分からなかったが、ハッタリは得意なのだ。連中の青ざめる顔といったらなかった。
質屋のオヤジよ。製造番号の前にやることがあるんじゃないか?
説明書をくれる。とか、な.....
8月6日
今日は物件の下見に行った。ダウンタウンの外れにある、なんて事はない一戸建てだ。雨樋用の配管をつたえば楽に入れることだろう。
8月7日
酷い暑さだ。アスファルトの上で陽炎が揺れている。
例の物件の住人は一日の殆どを留守にしている。男の方は記者で、女の方はキャバ嬢だ。家のデカさから察するに、稼ぎは悪くない様だ。
せっかくの一戸建ても手入れには全く気を使われていなかった。
明日、決行しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます