第一章:常に、何かに、酔わねばならない

幕間:ある空巣の日記 序文

娘へ

 

 今、俺は夜柝駅のホームでこれを書いている。

書き出しを考えているだけで、小一時間悩んだ。お陰で、買った缶コーヒーはすっかり冷めきってしまっている。


 お別れを直接言えない事を、本当にすまなく思う。だが、ヘタレの俺には出来ない。辛すぎる。お前の想いに応えてやることが出来ない。


 お前は、俺が突然居なくなった理由を知りたがるだろう。それは当たり前の事だし、当然の権利だ。分かってる。いやというほど。


 本当に、すまない。


 この日記に、答えは全て詰まっている。俺が夜柝市に来てから書き始めた一冊だ。俺とお前の出会いも、俺がやらかしたことも、何もかもが書いてある。俺が、どれだけお前を愛しているのかもだ。

 

 お前は、俺の事を“父親”とは思ってくれなかったのだろう。だけど、それでも俺は愛している。              

                      

              

  

                 腑抜けな父親にして一流の空巣より

                                 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る