第4話:ケーキバイキング
「女子高校生というのは、もうその時点でブランドだ。世の中には、それだけで価値があるというものが幾つかある。で、その最たるものがJKというわけだ。」
真田建設代表取締役、真田晃司は眼前の人物に猛烈な弁を振るう。彼の股間も同じくらい滾っている。
真田の座るデスクの正面。床にビスで固定された椅子が据え置かれ、その上に少女が縛り付けられている。
少女の記憶は、下校途中の記憶で途切れていた。絵に描いたような黒塗りのハイエースに引き込まれた後の記憶がないのだ。
気付けば、ガリガリに痩せた身なりのいい男の前に縛り付けられていた。ギャグボールを噛まされていた。
真田は獲物の周りを、戸愚呂を巻く蛇の様に少女の周りを回り始める。窓から差し込む陽光によって、真田の肌に塗りたくられたワセリンがぬらぬらと照り輝く。
「いい、いい、実にイイ。シャツの第一ボタンが外されている所なんて、全く堪んないよ。」
椅子の周りを一周半。獲物の後ろを取った真田は少女にしなだれかかる。
少女の顎に手をやり、一撫でし、人差し指と親指で挟む様に、頬をつつく。少女の顔を覗き込み、舐め回すように観察する。
のたうつ針金虫のように右へ左へと首を振り、少女を愛でた。
「先日、お持ち帰りした美人局のギャルも最高だったが、君の方がイイ。青春の香りがするよ。」
少女の口から吐息が漏れる。恐怖で脈拍は乱れ、息を吸っているのか、吐いているのかも定かではない。
服の上を這い回るグロテスクな細指が気色悪くてたまらない。
少女は叫びたかった。だが、幾ら声を張り上げようとしても、ギャグボールの隙間から下手くそな口笛のような息が出るだけだった。
出来ることは、目を瞑って全てを無視することだけだった。
真田が再び、頬に指を伸ばす。少女の口角を押し上げる。君の悪いほど歯並びのいい歯を剥き出しにして、少女に強く懇願する。
「笑って?笑って?笑ってくれるかい?なあ、分かるかい?目の前にケーキバイキングがあるように笑うんだ。分かるだろう?」
真田は少女の顔面を覗き込んだ。
少女は笑った。笑うしかなかった。ギャグを噛み締め、笑った。
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