第5話

「ええと、それで……」


「……見ての通りです」


それしか言えなかった。何故なら。


「ここが冒険者ギルドというものか。初めて来たぞ!」


「そらそやろなぁ。」


少し離れた所で、わははと戯れているのはウチの義賊のニコ。そして件の

上級魔族ロゼだ。


どうやらあのTRPGですっかりオレたちに懐いてしまったロゼが、

なんと4人とかでもTRPGをしたいと言って無理やり仲間入りしてきたのだ。


元々押しに弱いというか……noと言えないタイプのオレ。

しかもニコはロゼをたいそう気に入ってしまい、しぶしぶというか、なんかもう嬉々としてPT参加を認めてしまっていた。


「とりあえず、問題の迷宮はロゼ本人に破壊してもらったんで、一応依頼は達成って事で良いですかね?」


「わかりました。では報酬はこちらになりますが……。ロゼさんの件は、上に報告しておきますね。」


どうなるかはちょっと判りませんが。


「あ、はい。それでお願いします……でも、まあ悪い奴ではないと思いますんで、それは伝えておいてもらえると。」


「……そうですね。TRPG仲間欲しさに人集めしちゃうのって、なんか可愛いですし。」


女性は美形には甘いのか?そんな考えが一瞬浮かんで消えた。



後日ー。


「ぬおおおお!ニコは何故そんなに強いのだ!運ゲームでも勝てんぞ!!」


「わたしの幸運かつゲームの腕前舐めたらアカンで!」


今日も今日とて、冒険者ギルドのある一角で、カードゲームに興じるオレたちがいる。


あれから、ロゼはオレたち2人とこの街のギルドの観察下の元という条件で、

正式に冒険者登録をして、

オレたちのPTに参加した。ロゼはさすが上級魔族なだけあって、

剣の腕も魔術も絶大な威力だった。

正直、もしこいつがあの時ゲームばかじゃなくて、

普通にボスとしてエンカウントしていたら、

オレたち2人は瞬殺されていただろう……。

ある意味、運が良かった。


ロゼはとても変わった上級魔族だった。


幼い頃から、人の創り出す物語、ゲームが大好きで、

そしてそれらを生み出す人々が大好きなのだという。


そしてなんと、人との共存を主張しているという、本当にビックリな上級魔族だ。


そんなロゼを最初は恐れていたギルドの冒険者たちも、

オレやニコとのやり取りを見ていたのだろう、

次第に緊張感は無くなっていき、今ではもうすっかり仲間内に入ってしまっている。


そんなオレたちの日課は、依頼後に必ずするゲームなのだが……


「うむ、今回もぶっちぎりでシンが最下位だな!」


「シン弱すぎやねん。背後霊に嫌われてるんちゃう?」


「それを言うなら守護霊だろが!つかお前らが強すぎるんだよ」


そう。この2人、ゲームというゲームは鬼のように強い。

なんでこんなに強いんだ。

オレは決して弱くない。うん、弱くないはず。


「では次は、この新作のボードゲームをしようではないか!」


「うわー!それまた入手困難なやつやん!やろやろ!!」


「よしシン、このボードゲームでは最初に賽子を振らせてやろう!存分に勝つが良い!」


「シンは激弱やからな〜」


「……お前ら見てろよ、次は絶対勝ってやるからな!」



……なお、このゲームでもオレはまた最下位でした。


ああ、平和って良いなぁ……。



いちおう、おわり。

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サイコロで始まる絆 とりと @piyorin3

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