第32話

「じゃあ、今日からお手伝いしてもいい!?」



「こら香織、まだ最後まで言ってないわよ!」



もう母親の声なんて聞こえない。



香織は嫌がる三毛猫を無理矢理抱き上げて頬ずりをした。



「やったぁー!!」



☆☆☆


「いらっしゃいいらっしゃい! おいしいクレープだよ!」



キッチンカーの前で旗を振って客寄せをしていると、「ブッ!」と噴出す声が聞こえてきて振り向いた。



「彩香ちゃんと玲美ちゃん!」



「香織ちゃん、それじゃまるで屋台の客引きだよ」



「えへへ。二人とも来てくれたんだ?」



「もちろん! ここのクレープおいしいもんね」



香織の足元には三毛猫が擦り寄ってくる。



キッチンカーを出すときには必ず連れてきて、首輪でつないでいたらしい。



それが逃げ出してしまったのが香織と初めて出会った広場でのこと。



だから藤田さんはあんなに一生懸命になって茂みの中を探していたのだ。



藤田さんが心をすり減らしている間に三毛猫は野良猫が多く住み着いている大学に紛れ込み、学生さんたちに可愛がられていたというわけだ。



花火大会の日に沢山いた猫たちは、大学生についてきてしまった猫たちで、その中に藤田さんの猫も混ざっていたのだ。



浴衣姿のお姉さんはただの大学生で、藤田さんとは全くの無関係だった。



「いらっしゃいいらっしゃい! おいしいクレープだよ!」



心がスッキリと晴れ渡った香織の声はどこまでの遠くに響いて行くのだった。





おわり

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謎解きキッチンカー 西羽咲 花月 @katsuki03

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