〜蛇足〜
未だ火は消えず
龍の昇天から半年程後、
その為、対外的には次期国王の即位の準備が出来るまで、その死は秘されていた。
人々は、前国王の急死を、
今回の式典は、
最初は、初めての子を妊娠している最愛の妻と長い期間離れるのを渋っていた
その途中に、
庁舎に着き、
「
耳が良い
「
「そうか」
二人は肩を並べて、話しながら
「
「それは良い! 流石、
「ええ。有り難いことです」
目的の部屋まで来ると、
入室の許可が出ると、
「
それを受けて
「
「はい。風邪を引く暇もありません」
「ハハ。そうだろうな」
三人は和やかに挨拶を交わし、椅子に座った。
「どうだ、貯水湖工事の方は順調か?」
「ええ。あの時、
「そうか。皮肉なものだな。自分たちが住んでいたところを沈める為の工事を進んですることになるとは」
「ええ。ですが、その仕事があったお陰で、鍛冶師以外の者達も生活して行けるのですから、文句は言えません」
「そうだな。それと、その鍛冶師達も新しい鍛冶場には慣れたのか?」
「ええ。皆、切磋琢磨して競い合うように剣や槍などを打ってくれています」
それを受けた
ちなみに、以前の
「それは良かった。前に、試しにと送ってくれた剣も素晴らしかった。
「そうですか。
「ああ」
その後、
話が尽きることは無く、辺りが暗くなってからハッとして、話を切り上げ、宿へと向かった。
翌朝、宿まで遣って来た
道中何事も無く、
以前よりも元気そうな様子の王妃に、
そして、その傍らに控えていた人物に目を遣り、少し驚く。
「王妃様。その者は……」
「ええ。実は、パサンは前宰相の攻撃を防いでくれた、一番の功労者なのよ。その後、我が息子に忠誠を誓ってくれて、こうして仕えてくれているの。行く行くは、彼を宰相にと思っているのだけれど、彼は武官として仕えることを希望していてね。今は、保留の状態なのよ」
王妃は、そう言って苦笑する。
「そうですか」
「パサンが、貴方と話したいと言うのだけれど、構わないかしら?」
「ええ」
「良かったわ。パサン、後の案内を頼めるかしら?」
「はい」
パサンは、
「こちらが、皆様の控えの間となります」
「ありがとう。それで、話とは?」
部屋の中へ入ると直に、
「
パサンはそう言って、頭を垂れた。
「頭を上げてくれ。俺は全く気にしちゃいないさ。それよりも、そんなに丁寧に話されると気持ち悪いのだが」と言って、
「そのように言われましても、今の私は、この国の下っ端官僚ですから、気安い口調で話す訳には参りません」
「固いな。まぁ、仕方ないか」
パサンの真面目な態度に、
「ご理解いただき、恐縮です。……あの時は、死んでも構わないと思っていましたが、今となっては、この国へと帰って来られて良かったと思っています。だから、貴方様には感謝しております」
「そうか。それを聞いて安心した」
「あの時……」
「ん?」
「あの夜に聞いた、貴方様の笛の音は、凍て付いていた私の心を溶かしていってくれました。貴方様のように澄んだ音色を奏でられる人がいるのなら、
そう言って、パサンは部屋を後にした。
翌日、
「
「えっ!?」
「
それに、
「伯父上。こちらこそお会い出来て光栄です」
「おお、何と素晴らしい! フルが教えたのか?」
伯父は、歓喜し、その後は
「はい」
「そうか」
「いや、何。この場を借りて、先日いただいた素晴らしい工芸品のお礼を言いたかったのだ」
「あっ! 私もずっとお礼を言いそびれていたわ。素晴らしい品をありがとう」
王妃も慌てて、謝辞を述べた。
「喜んでいただけたのでしたら、良かったです」
「それで、そのお返しに我が国が信仰している宗教の経典や神像を贈りたいと思っているのだが、我が父がそれを持って、
「まぁ」
伯父の申し出に、王妃も驚く。
「父は、フルの墓参りと住んでいた場所を見てみたいと。そして、孫に会いたいと」
「そうですか……。私としては、歓迎いたしますが、その、長旅は大丈夫なのでしょうか?」
「はは。年の心配をしているのなら、大丈夫だ。今でも、山登りを日課にしておられる。
「そうですか」
伯父の気安い答えに、
「今回も、
「それは嬉しい限りです。何時でもお待ちしておりますとお伝え下さい」
「ああ。伝えておくよ」
その後、
その報告書を受け取った
「あとは、
「ああ」
工芸品を送った国々からは、返書や返礼の品が届いていたが、半年以上経った今でも、
ちなみに、
そして、
それを哀れに思った
もちろん、他の国からも建前であった
だが、決して
ある奸臣が、自分の娘を
「何故、オオカミを子羊のいる檻の中へ入れなければならないのだ? 私がそんなに愚か者に見えるのか?」と。
その奸臣は、閑職へと追いやられたと言う。
それから数日後、慌てた様子の
「陛下!」
「
「それが……」
「落ち着いて、用件を話せ」
「
「これは!」
中には、使節団として送った代表者の生首が入っていた。
「陛下。この者だけではなく、かの国へ行った全員の首が送り返されてきました」
「何!?」
「それと、こちらの書簡が……」
「陛下。それには何と?」
それを受け取った
「何と!?」
書簡には、「
「
それを
このままでは、
「陛下。如何致しましょう?」
そのまま腕を組み、暫し黙考した後、一息吐いてから、ゆっくりと目を開ける。
「そうだな、龍の守りが強固となった今の我が国に攻め込むということが、どういうことか、かの国の者達は身を以て知ることになるだろう……」
首を捻って、
「一体全体、どういうことでしょう?」
「それは……−−−−−−−−」
それは、また別のお話……。
____________________________________
蛇足までお付き合い下さり、本当に有り難うございます。
今後、気分次第で小話などを書くかもしれませんが、一旦、このお話は終わりとします。
画竜点睛〜龍に守られし国〜 由 @yuka111
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