第17話 夢の続きを感じたい
悠月「人多いな…」
彩葉「…うん」
思った以上の人がギャラリー内にいた。
展示してあった作品は、
一定数は片付けられてしまったのか見当たらない。
ただ、あの絵は入って正面の一番目立つところにある。
まるで、ひと際目立つその絵を囲むように
人々は談笑を広げていた。
悠月「場違い感半端ないな(笑)」
彩葉「大人の人ばかりだもんね」
悠月「こりゃ一人じゃ怖くなるのもうなずけるわ」
彩葉「でしょ?」
入口付近で二人して少し笑い合う。
悠月が一緒に来てくれて、本当に良かったと、心から想う。
一輝「彩葉さん」
彩葉「あ、一輝、くん」
一輝「来てくれてありがとう」
彩葉「ううん、来たかったから」
一輝「そちらは、お友達?」
彩葉「あ、うん」
悠月「ちわ~、悠月っす」
一輝「悠月さん、初めまして、かな?」
悠月「ん~、まぁ、そんなとこっすね」
彩葉「ちょっと悠月、嘘言わないの」
一輝「あれ、もしかして、彩葉さんと一緒に個展に来てくれてた方かな?」
悠月「そうっすね~」
一輝「そうだったんだ、ごめんね、気づかなくて」
悠月「大丈夫っすよ! あんまそういうの気にしないんで!」
彩葉「悠月が変にごまかすから~」
悠月「でも、大丈夫だったっしょ? いろはっち」
彩葉「もう…」
一輝「いろはっち……」
そこで、彼の声のトーンが少し変わった。
少し下を俯き、額に手を当て、
何かを考えているような、そんな仕草を見せる。
彩葉「一輝、くん?」
一輝「あ、あぁ、ごめんね、彩葉さん」
彩葉「ううん。 大丈夫…? 体調でも良くないとか…?」
一輝「大丈夫。さ、こっちへ。簡単な軽食も用意してあるから、どうぞ」
悠月「お、やったね! ケータリングってやつ?」
一輝「そんな大層なものではないけれど、遠慮なくどうぞ」
悠月「いぇ~い」
彩葉「ちょっと悠月~」
足早に向かっていく悠月。
物怖じしないというかなんというか…。
彩葉「なんか、ごめんなさい…」
一輝「いえいえ、元気な方ですね」
彩葉「昔からなんです。男らしいというか…」
一輝「彩葉さんとは正反対に見えますね」
彩葉「そう、ですね。確かに、全然違う、かもですね」
一輝「彩葉さん、緊張されてます?」
彩葉「え!? い、いえ、そんなことは…」
一輝「なんか話し方がさっきと違うから」
彩葉「ち、違いますか?」
一輝「お友達が一緒だと、話しやすいのかなって思ったんだけど」
彩葉「ま、まぁ、そうです、ね」
ばれていた。
確かに二人だと緊張するけれど…。
だって、何話したらいいかわからないもん…。
悠月~、どうして一人にするの~…。
一輝「じゃあ、彩葉さんも、こちらへどうぞ」
彩葉「は、はい。し、失礼します」
一輝「そんな堅苦しくしないで、大丈夫ですよ」
彩葉「あ、は、はい…」
うぅ…緊張する…。
なんか大人の余裕? みたいなものを感じるよ、一輝君!
知らない間に、すごく遠くに行ってしまったような…。
2年前、すごく無愛想だった一輝君はどこに行ってしまったの!?
…なんかかっこいいんだよなぁ。
悠月はというと、
めちゃくちゃたくさん食べていた。
ここぞとばかりに。
悠月「アスリートは、エネルギー大事だから」
この一言で片づけられてしまう。
いや、この時間から運動するの…?
スタッフ「一輝さん、あちらの方がお呼びです」
一輝「わかりました。ありがとうございます」
彩葉「あっ…ごめんなさい、引き止めてしまって」
一輝「大丈夫ですよ。では、また。楽しんでくださいね」
彩葉「はい、ありがとうございます!」
本当に幸せな時間だとしみじみ感じた。
ずっと続けばいいのに。
そんな当たり前なことはなくて。
夢のような話はなくて。
これから私は、現実を目の当たりにすることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます