第13話 2度目の邂逅

彩葉「…合ってる、よね…?」


入口の文字を見ながら、周りを見渡す。

チケットの地図に書かれている場所は確かにここだ。

けれど、人が入っている気配はない。

不安になり、もう一度入口を見る。

welcomeの文字。


悠月「いろはっち」

彩葉「わぁ!!」

悠月「そんなに驚く?」

彩葉「悠月かぁ~…びっくりしたぁ。どこにいたの?」

悠月「ん? そこの階段に座ってた」


悠月が指さす方向を見ると、

建物の側面、壁に沿って裏口に繋がるであろう階段があった。

段数にして4、5段程度だろうか。

建物の周りにはたくさんの木が植えられているため、

日当たりはあまり良いとは言えない。

けれど、夏場は心地よい涼みスポットになりそうな、そんな階段である。

…春が近づいているとはいえ、今日は雨も降ってて、まだ肌寒いけど。


彩葉「寒くないの?」

悠月「ん、寒い」

彩葉「そんなところで座ってるからだよ~」

悠月「雨宿りにもちょうどよかったし」

彩葉「もう~…」

悠月「さ~て、入ろうぜ」

彩葉「う、うん…」

悠月「なんだ? 緊張してる?(笑)」

彩葉「うるさいなぁ~!」


ドアノブに手をかける。

ひんやりとした感覚が全身に伝わってくる。

緊張が一気に増してくる。

この扉の向こうに、彼がいるかもしれない。

ドキドキ感と

わくわく感と

緊張感が相まって、頭の中が大変なことになっている。


彩葉「お邪魔しま~す…」

悠月「人の家かよ」

彩葉「あっ…じゃあ、こんにちは?」

悠月「どっちでもいいわ、ちわ~っす!」

彩葉「ちょっと悠月~!」


中に入ってみると、思ったより広い空間が広がっていて

木目調の床にシンプルな白の壁。

壁にはたくさんの絵画が飾られていた。

天井からはおしゃれな電灯が首を垂らしている。

耳を澄ますと、オルゴールが鳴っているのが聞こえてくる。


彩葉「誰も、いない、のかな?」

悠月「そんなはずはないと思うけどね。休憩とかじゃない?」

彩葉「そっかぁ~…」

悠月「それまで見てようぜ」

彩葉「うん」


床と叩く靴の音が響く。

ほのかに木の香りも漂っている。

ふと、一枚の絵に目が留まった。

どこまでも続くような地平線に

真っ青な空、所々の雲。

そこに鳥のようなものが描かれている絵だった。


彩葉「…綺麗」


真っ白ではない雲の色。

どこか寂し気な、そんな感じの色使い。

しかも、鳥だと思っていたものが


彩葉「…人? かな?」


空を飛んでいるような、そんな人にも見える。

引き込まれそうな、不思議な絵だ。


???「…いらっしゃい」

悠月「ちわっす」


後ろから、ちょっと不愛想な声と悠月の声が聞こえた。


彩葉「…あっ」


そこに立っていたのは、

2年前のあの日、

通学路の途中の畑で言葉を交わした

一輝の姿だった。

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