第12話 雨の日の朝

翌日。

天気はあいにくの雨。

私が行動しようとするときは、決まって天気が悪い。

もしかしたら、雨女…?

いやいや、まさかね。


レインブーツを履き、家を出ようとすると、


陽人「彩葉、もう出かけるのか?」

彩葉「うん、雨だからね。早めに出ておこうと思って」

陽人「近くまで、送ってくよ」

彩葉「え? いいよ~、近くだし」

陽人「いいから。ほら、行くぞ~」

彩葉「はぁい」


雨だから、濡れたりするのは確かにいやだったけど、

なんか今日のお兄ちゃんは優しい。

昨日のお兄ちゃんが嘘のようだ。


車で近くまで送ってもらうことに。


彩葉「お兄ちゃんの運転する車、初めて乗ったなぁ」

陽人「そういえば、そうだなぁ。どうだ? 怖くないか?」

彩葉「怖いって言ったらどうするの?(笑)」

陽人「気を付けるしかないな(笑)」


道路は舗装されてはいるが、

所々、地面が隆起したり、割れていたりする。

田舎の道だ。

舗装されてから随分と経っている。

車通しすれ違うのにやっとくらいの道幅。

よくみんな運転できるなと思う。

私だったら、絶対に無理だ。


陽人「そういえば彩葉」

彩葉「ん~? なぁに?」

陽人「どうして急に個展なんか行こうと思ったんだ?」

彩葉「そ、それは~…興味だよ!」

陽人「ふーん? 興味ねぇ…」

彩葉「別にいいでしょ!」

陽人「ま、芸術に興味を持つのは、悪い事じゃないからな」

彩葉「でしょでしょ?」

陽人「本当に芸術に興味を持っていれば、の話だが」

彩葉「うっ…」


痛い所ついてくるなぁ。

お兄ちゃん、勘が鋭い?

個展を開いている人が気になるなんて言ったら、

行くの止められそうだし…。


陽人「ほら、着いたぞ」

彩葉「え、もう?」

陽人「まぁ、近いからな」

彩葉「そっか、ありがと、お兄ちゃん」

陽人「おう、帰り迎え必要か?」

彩葉「ん~、悠月と一緒に帰ると思うから、大丈夫!」

陽人「そうか、気を付けてな?」

彩葉「うんっ! いってきます!」

陽人「いってらっしゃい」


車から降り、個展が開かれている建物を見上げる。

元々アパートだったのかな。

少し改築し、ギャラリーとして貸し出しているような、そんな雰囲気の建物だ。


そして、入口にはこう記載がしてあった。


『Itsuki's gallery』

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