第10話 それぞれの道

当たり前の日常が通り過ぎていく。

月日が流れていく。


特別なことが起こることもなければ、

大きな変化が起こるわけでもない。


しいて言うならば

自分の人生をどういう風に描いていくのか、

その選択をする時期がもう目の前に迫っているということだ。


高校生というステータスが終わりを迎える。

『華のJK』からの卒業。


私は、漠然と、大学に進むことを選んだ。

こんなご時世だ。

大学は卒業しておいた方が、今後のためになる。

という安易な考えのもと決めた進路。

国立文系。


悠月は、スポーツ推薦で大学が決まったそうだ。

高校から始めた『ラクロス』で進路が決まるとは、

やはり彼女は天才なのかもしれない。


そんな学校生活、日々を生きていく中で、

私の頭の隅っこには、彼の存在があった。


あれから、彼とは一度も会うことはなかった。


親友である悠月以外の人は

そんな男の人が居たことを信じてくれなかった。

幽霊だと言う人もいた。

幻だったのだろうか?

それとも、存在すらしていなかったのか?


今となっては確認することすらできない。


世間は思ったより狭い。

誰かの耳に、彼の情報が入ってきてもおかしくはないのだが…。



………


無事に大学が決まり、

家族で簡単な祝賀会を開くことになった。


お兄ちゃんも久しぶりに帰ってくるそうだ。

2年前の冬から会っていない。

また女の子に振られてなければいいけど…。


それぞれ別の方向を向いていた歯車が

徐々に近づきつつあることを

祝賀会当日を迎えるまで

私は知る由もなかった。

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