第9話 再び、訪れる日常

翌朝。


陽人「彩葉、起きろ~。学校遅刻するぞ~?」

彩葉「う~ん…はぁい」


昨日、遅くまでお兄ちゃんと話していた。

中学生の頃の思い出話。

高校受験が辛かったこと。

お兄ちゃんのことを忘れかけていたことなど。

話しのネタが尽きることはなかった。


陽人「今日は天気良いな」

彩葉「…寒いよぉ」


前日とは打って変わって、澄み渡る青空。

太陽の光が反射して眩しい。


陽人「今日、学校終わったら、飯でも行くか、彩葉」

彩葉「え、行く!!」

陽人「はははっ、じゃあ、頑張って学校行ってらっしゃい」

彩葉「うん1」


眠気や寒さが一気に吹き飛ぶ。

私って単純なのかな…(笑)


彩葉「いってきま~す!」


今日も自転車はやめとこう。

雪が積もった次の日は、危ないからね。

小学校の頃に、雪道を自転車で走って転んだことを思い出していた。


彩葉「そういえば、今日は…いるかな、一輝くん」


昨日会えなかったから、

今日こそは会えることを願いながら、

道を進んでいく。


いつもの場所に辿り着く。

辺り一面真っ白だ。


彩葉「……やっぱり、いない」


彼の姿は見当たらなかった。

諦めて、歩き出そうとすると、


悠月「おっはよ、いろはっち」


聞きなれた声。


彩葉「え、悠月!? おはよぉ~! どうしてここに?」

悠月「ん~、なんとなく?」

彩葉「なにそれ~」

悠月「くくくっ…」


待っててくれたのかな。

昨日のこと気にして…。

優しいよね、ほんと、悠月は。


悠月「さ、学校いこうぜ」

彩葉「うん! あ、昨日ね、お兄ちゃんが帰ってきたの!」

悠月「マジで? なんてタイムリーな」

彩葉「そうなの! でね! 今日の夜、ご飯連れてってくれるんだ~!」

悠月「ほぉ~? よかったじゃん、いろはっち」

彩葉「うん!」

悠月「いろはっちって、ブラコン?」

彩葉「え!? どうしてそうなるの!?」

悠月「嬉しそうだし」

彩葉「そりゃあ、嬉しいでしょ? 久しぶりに会えたわけだし~」

悠月「そっかそっか」


他愛もない、悠月との会話。

日常へと戻る瞬間。

非日常を感じ取れた僅かな時間。


その日の夜、私とお兄ちゃんは焼肉を食べに行き、

たくさんの話をした。

お兄ちゃんの仕事の話や、

彼女に振られた話など。


……お兄ちゃん、振られたんだ。



それからというものの

いつも通りの日常が繰り返されていった。

何一つ変わらない。


学校へ行き、

授業を受け、

時には試験があり、

悠月とは、毎日のようにくだらない話をし……。


こうして月日は過ぎていった。

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