第3話 徐に、唐突に、
2階から3階へと続く階段。
昇った先には、理科室がある。
授業以外では、あまり生徒も使用しない階段だ。
彩葉「ここなら…」
理科室の独特な匂いを少し感じる。
階段の真ん中あたりに腰かけると、
悠月はその数段下に、どっこいしょと声を上げながら座った。
悠月「で?」
彩葉「えっとね…今朝の…」
悠月「知り合い?」
彩葉「ううん、知らない人」
悠月「ふーん?」
顔だけをこちらに向け、
疑ってくるような、
でも悪意はないことが感じ取れる。
たぶん、おおよその予想はついているのだろう。
こちらが言い出すのを待つように、トントンと足でリズムを刻む。
彩葉「あの人ね…ほぼ毎日ね、あの畑にいるの」
悠月「ニート?」
彩葉「ちがう! …と、思う」
すぐさま否定はしたものの、
本当のことを知らないと思ってしまい、
語尾に自信の無さが出てしまった。
悠月「てことは、仕事として?」
彩葉「…たぶん」
悠月「同い年くらいじゃないの?」
彩葉「わかんない」
悠月「ふーん」
詳しくは知らないのは本当だ。
よくもまぁそんな知らない男とあんな親しげに話せるな。
なんてことを考えるような子じゃないことはもちろんわかってはいた。
けれど、どうしてもそう思われてしまっているんじゃないかという気持ちが頭から離れない。
悠月「彩葉」
彩葉「なぁに?」
悠月「どんな人なんだろうな、あの人」
彩葉「ん~…」
悠月「気になる?」
彩葉「それは~…気にはなるけど…」
悠月「おっけ」
突然、勢いよくその場からジャンプする悠月。
着地した踊り場からこちらを振り返る。
満面の笑み、の中に少し不敵さも感じるのは気のせいだろうか。
悠月「明日、朝6時30分に、いろはっちの家行くわ」
彩葉「え!?」
悠月「じゃっ、そういうことで!」
彩葉「ちょっと! 悠月! どういうこと!?」
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
今日はとことん授業には集中できなさそうだ。
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