第2話

「おーーい、坊主!女の子から電話だぞ!」



(え、もしかしてAちゃんかな?)



まだ、誤解を解きたい気持ちを諦めきれなかった私は、Aちゃんからの電話だと思って嬉しくなった。



「あの~・・あなたの事、バスの中で見て・・・、好きに・・・・・なったんです。よかったら一度会ってくれませんか?」



知らない女の子からだった。



(ん?なんか、おかしいな・・・)



電話で話している女の子の後ろでは、複数の笑い声がかすかに聞こえた。



それに、何故、私がいる施設の番号を知っているのか?など、突っ込みどころ満載だった。



それでもバカな私は2割ホントかな?って気持ちもあった。



「ありがとう。いいけど、どこで会う?」



しかし、女の子が指定した待ち合わせ場所でイタズラだとわかった。



その場所とは、近所のドムドムというハンバーガー店だった。



そこは、Aちゃんの彼氏の暴走族のたまり場だったからだ。



(ふ~ん、そういう事かい。上等だよ!何人居るんか知らんけど、ごといったろやないかい!)



血気盛んな17歳。売られたケンカ買うたろやないかい!



カゴに棒みたいな罠やけど、Aちゃんも噛んでると思い込み、やけっぱちになっていた私。



数時間後・・・



待ち合わせ時間の夜8時の10分前。



私はスカジャン、両手には、殴る気マンマンでバンテージを巻いて行った。



店には族のメンバーらしき人間も何人かいた。皆、敵に見えて、目があったらやったるぞ的な目付きで店に入った。



私の異様な雰囲気を察知したのか、誰も目を合わそうとしてこなかった。



飲み物だけを注文し、入り口方向が一番見える席にヤカラ満開で足を大きく広げ座った私。



そして、待ち合わせ時刻の8時。



少し過ぎて、Aちゃんと彼氏らしき男、あと、友人カップルらしき二人の男女、計4人が会話しながら店に入ってきた。



私はそのグループを睨み付けていた。



私に気が付くAちゃん。



驚いた顔をしていた。



それで、全てが理解できた。



おそらく、私とAちゃんの経緯を知っている友達がAちゃんにシャレにならないイタズラを仕掛けたのだろう。



その友達たちも、この光景をどこかで見て笑っているのだろう。私は怒りと虚しさで一刻も早くこの場を立ち去りたかった。



ただ、そいつらがケンカを売ってきたら買う気マンマンではあった。



ケンカを仕掛けてこないのを確認できた私は、驚くAちゃんの横を通って無言で立ち去った。



きっと、Aちゃんの中では、手にバンテージ巻いた男に、殴り殺されそうになってたかもしれないという戦慄のストーカー体験談として、今もなお語り継がれている事だろう。



という訳で、私はこの件以来、嫌い、嫌だと言われたら未練があろうとなかろうと、一切、追わないと心に強く強く刻んだ経験だった。



にしても、Aちゃん怖かっただろうな。(笑)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦慄!恐怖のストーカー男 絶坊主 @zetubouzu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ