戦慄!恐怖のストーカー男

絶坊主

第1話

17歳の頃の話。



若い頃ヤンチャだった施設の悪先輩Dさん(19歳)。



Dさんは未成年の私にいろんな悪い遊びを教えてくれた。



「コブシ!女二人引っかけたから、いくぞ!」



夜、施設の部屋にいた私に、あわてたDさんが突然やって来た。



断る理由もなかった私は、とりあえず外行きの服に着替えてDさんの車に乗った。



Dさんによると、テレクラに行き二人組の女の子とアポがとれたとの事だった。



待ち合わせ場所に行くと幼さが残る女の子二人がいた。



車に乗り少しドライブをしてから、Dさん行き付けのオシャレなバーに行った。



女の子たちは中学3年生だった。



ヤンチャそうな外見だったけれど、どうりで幼さが残っていたわけだ。



その日は結局、連絡先だけ聞いて帰った。



その後、電話のやり取りをして、クリスマスが近かったのでイブの日にデートの約束をした。



D先輩の方は、その後ダメだったとの事で、なんか漁夫の利満開の私は申し訳ない気持ちだった。



実はホステス遊びはしてたけど、普通の女の子とのデートは初めてだった私。



当時、ホットドッグプレスという恋愛指南本を愛読していた。



初めてのクリスマスデートに向けて、用意周到に準備をすべく店のリサーチをした。



思いっきり背伸びしてフランス料理のレストランを予約し、2軒目にはお洒落なショットバーに行こうと計画。



そしてクリスマス当日。



夜7時に待ち合わせをし、レストランへ。



私はスーツ、A子ちゃんも事前にフランス料理のレストランに行くと伝えてあったので大人っぽい格好をしていた。



それでもどこか二人とも幼さが残っていたはずだ。



お互いフランス料理のレストランに入るのは初めて。



二人で会うのも初めてだったし、いろんな緊張感が入り混じっていた。



店に入るとウェイターさんが席に案内してくれた。



あらかじめコース料理は予約していたので、飲み物だけ頼んだ。



Aちゃんは私に任すと言ったので、クリスマスだしワインを飲むことにした。



コース料理が運ばれる。



Aちゃんは不安そうに私の所作をチラチラ見ながらマネしていた。



お互い乾杯をして食べ始めた。



緊張からか杯が進み、未成年の二人は酔っぱらってきた。



そして、メインの肉料理が運ばれてきた。



普通のステーキではなく、そのまま横からスパンと切ったように真ん中に骨の断面がついたステーキだった。



(え?これ、ナイフとフォークだけで、どうやって食べんの?)



見ると、Aちゃんもどうやって食べたらいいのかわからずに、食べ方わかんない!と小声で言ってきた。



ここは一つ男らしいところを見せねば!



私は勢いにまかせて思い切ってナイフを下に降ろした。



断面の骨に引っかかっていたナイフが勢いよく皿に打ち付けられる。



カキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!



甲子園球児が快音を響かせヒットを打ったかのような音が、ムーディーな音楽が流れていた静かな店内に鳴り響く。



思わず二人共笑ってしまった。



そんな出来事や、お酒の力もあり段々とAちゃんと打ち解けていった。



Aちゃんには暴走族の特攻隊長をしている彼氏がいた。



最近はケンカをよくしていて、だから、クリスマスにも会わないんだと言っていた。



2軒目のショットバーに行った頃には、二人とも相当酔いが回っていた。



そんなつもりは全然なかったんだけど酒の勢いで言ってしまった。



「Aちゃん、今日、泊まれる?」



少しの間があり、コクンと頷くAちゃん。



風雲急を告げる展開!



まさかホテルに行く展開になるとは!



想定していなかったので、予約なんかしていなかった。



童貞だった私は浮き足立ってしまった。



え?今日、卒業できるの?



バーを出て、空いているラブホテルを探し歩いた。



しかし、悲しいかなクリスマスイブ。



全ホテル満室の赤いランプが灯っていた。



諦めて帰ればいいものを、童貞の私は探し続けることを諦められなかった。



明らかに、しばらくしてAちゃんが嫌そうな態度をとっているのに気が付いた。



探し始めて30分以上経っていた。



「ご、ごめん・・か、帰ろうか・・。」



雰囲気最悪のまま、二人家路についた。



翌日、Aちゃんにそんなつもりはなかったんだと一言謝りたかった。



当時は携帯なんかないので、家の電話にかけた。



「Aはいません。」



2日連続でかけても、Aちゃんと話はできなかった。



そして3日目、Aちゃんにかけようと思っていたら施設に私宛の電話。



「あのさー、A嫌がってるから!迷惑やから、もう電話せんといてくれる!」



Aちゃんの友達らしき女の子が言った。



「いや、俺は・・」



ツーツーツー・・・・・



結局、Aちゃんとは話ができなかった。



そんな嫌がってたなんて・・・



そんなつもりじゃなかったのに・・・



俺はただ、あの時の誤解を解きたかっただけだったのに・・・



失意の中過ごしていた次の日。



意外な電話が私宛にかかってきた。


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