2-7 コラール
何か大きな気配を感じて、テオとホーンは思わず身構えた。と、いきなり凄まじい音とともに、一同の右手に、呆れるほど巨大な水柱があがった。一気に噴き上がった水は今度はおそろしい音をたてて淵へと落ち込んでいき、あたりにはじける無数の水しぶきが月光をはねかえしてきらきらとまぶしかった。テオは思わずそれをきれいだなあと思いながらも、そんな中に立つ自分が何故かびしょぬれにならないのが、やはりとても不思議だった。
「あっ・・。」
流れ落ちた水の下から現れ出てきた黒い影に、思わずテオは我が目を疑った。二つの大きな玉のような眼が、はるか頭上からテオたちを見下ろしていた。ぬらぬらと光るその身体には、本で見たのと同じ、鎧のような鱗が重なっていた。そう、あれは本で見た・・
「竜だ・・。」
まさか本当にそんなものを、拝む日が来るとは思わなかった。
竜は一声、高く鳴いたが、それは、耳に捉えられる音と捉えられない音の境界をゆらゆらとさまよっているような響きだった。そして竜はそっとその大きな首を屈めると、鼻先をアンジェリアのそばに静かに寄せた。アンジェリアはそれに寄り添い、いかにも愛おし気に大きな皮膚を抱くようにして撫でた。セルレートとティストも竜に歩み寄り、手のひらで軽く、何度も親しそうにそれを叩いていた。
「これがコラールですわ。」
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