2-8 その夜

 ただただその光景を見つめていたテオとホーンに、アンジェリアが微笑んでそう言った。

 「三年前までは一緒に住んでおりましたの。その頃はこの子も、セルレートやティストと同じような姿だったのですけどね。あの日から・・ヴァン様がお越しになったあの夜から」

と言ってアンジェリアはコラールに頬を寄せた。

 「この子はこの姿になったのですわ。」

 えっとテオの瞳が開く。

 「アンジェリア様、それはどういうことですか?」

 尋ねるテオにアンジェリアはうなづき返す。

 「今からお話いたしますわ、あの時のこと。ヴァン様には本当に、申し訳ないことをしてしまったのかもしれません。」

 そして彼女はコラールの肌に触れたまま、歌うような声でその日のことを語り始めた。


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 闇夜の中、自分を何度か呼ぶ声に、ヴァンはふと目を覚ました。

 昼間、たかだかかの有名な神殿に参ろうとしただけで山中でさんざ迷い、たどり着いたのがこの家だった。まだ少女とも呼べそうな綺麗な娘と、賢そうな三人の少年、四きょうだいの住むここでその晩は世話になることにして、すっかりくつろがせてもらったあと、昼間の疲れか、彼はものが落っこちるようにすとんと眠りについてしまった。元々どこででもよく眠る男だった。

 「ヴァン様・・?」

 「コラール?」

 その声はたしか、三人の男の子のうちまん中で、うすい赤褐色のさらさらした髪が特によく目立つ、コラールのものだった。

 「どうかしたのか?」

 

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