2-4 アンジェリア

 「ようこそお待ちしておりました。」

 アンジェリアはすみれ色の瞳を和ませてテオとホーンにそう言うと、セルレートにありがとうお疲れさまでした、と声をかけた。セルレートはアンジェリアに笑って返すと、テオとホーンに軽く会釈をして家の裏手のほうに消えて行った。セルレートとほとんど年も変わらないくらいの、輝く髪のティストが歩み寄って、テオたちと握手を交わし名前を名乗ると、すぐにセルレートのあとを追って、裏手のほうへと消えて行った。

 「食事の支度をいたしますの。」

 部屋を出るティストの背中を見遣って、微笑みながらアンジェリアが言った。

 「わたしもすぐに参りますわ。今回は突然お招きしてごめんなさい、びっくりなさったでしょう。よく来て下さいましたわ。」

 アンジェリアはくすくすと笑ってそう言った。

 「兄をご存知と伺いましたが。」

 テオがそう切り出すと、

 「はい、ヴァン様は確かにこちらにお越しでした。お話は伺っておりましたので、おふたりのことはすぐわかりましたの。お寄りいただけて嬉しいです。ごゆっくりなさって下さいね。」

 言い終わるとアンジェリアはまたやさしく笑った。あら気がつきませんで、どうぞお掛けくださいな、お飲物をお持ちしますと言うので、おかまいなくと応えてとりあえず椅子には腰を掛ける。

 「何かお預けしてあるものがあるそうですね。」

 またもテオが言うと、アンジェリアはええ、とうなづいて、

 「お預けになったというより置いていかれたものですけど。お返しいたしますわ。でも夜でよろしいでしょうか?弟のところにありますの。弟は大変ヴァン様にお世話になっていますから、テオ様とホーン様にお目にかかれれば喜びます。」

 「弟さん?他にも弟さんがいらっしゃるのですか?」

 「ええはい、コラールと申します。今はちょっと離れたところにいるのですけれど、ね。」

 言いながらアンジェリアは上の棚から丸いピッチャーをゆっくりとおろした。

 

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