2-2 少年

 水が見たいというのも妙なようだが、長いこと山中をさまよい歩いて疲れてきていたふたりには、水のある風景はかなりの魅力だった。道を外れるのはさすがに止しにして、今までのとおりにまっすぐ進むと、音はだんだん滝らしくなり、行く手がなんだか冷んやりとして感じられた。

 突然ふっと景色がひらけ、目の前に大きな滝が姿をあらわした。巨大というわけにはいかないが、なかなか堂々とした滝である。テオとホーンは足をとめ、目をかがやかせてその音とうすい水煙に見入っていた。疲れが溶け去ったような気がして、身体がとても軽かった。ふたりが出た崖は滝の丁度中腹ほどの高さになり、正面をむいて右手むこうに滝の口があった。あたりには緑濃い木々が枝を垂れ伸ばして生い茂り、ほの暗いかげを作ってまさに目にも涼やかだった。

 テオはやっと滝から目を切ってあたりを見回し、そこの岩に、色の白い少年が、あたりにすっかり溶け込むように腰掛けているのに気が付いてやや胆をつぶした。

 「どうした・・」

 テオの様子に気付いたホーンがそちらを見る。それと同時に岩に座っていた少年が、立ち上がってふたりに歩み寄った。

 「お待ちしておりました、テオ様、ホーン様。」

 背丈はまださほどないが、すらりとした手足の長い、清水のようなその少年は、はっきりとした口調でそう言った。

 「え?わたしたちをご存知・・」

 「はい。姉より言いつかってお迎えに参りました。わたしたちの家はすぐそこです。こちらにどうぞ。」

 「あの、お宅って・・?」

 「ええ。」

 少年はにっこりと天使もかくやと思わせる笑顔を見せて答えた。

 「姉が申しますに、おふたかたは、本日中にはもうこの山からお出になれないだろうということでした。ここはすでにかなり山深くなっておりますし、日ももう半分も残っておりませんから。ですのでどうぞ今夜は家にお泊まり下さい。お二人にお見せしたいものもあるとのことです。」

 

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