第二章・水ある場所で
2-1 滝の音
「・・こんなに遠いわけないよね。」
その日何度目かにテオがそう言った。ホーンのほうはむずかしい顔でむっつりと黙ったまま、それでも小さくうなづいて返す。
「神殿こっちだって確かに言ってたよねえ・・・。」
その日も朝早くから、いつものように元気良く出発した二人だったが、間違いっこないよと言われて教わった道をそのとおり来た(はず)というのに、一向に目的地たる神殿は気配も見えない。ばかりか山はどんどん深くなって、気付けばいつの間にやら道の幅は相当に狭く、すでにどう考えても旅人たちが繁く通う、神殿へむかう道とは思えないところまでふたりは来ていた。
「迷ったのかな。」
「らしいな。」
「お告げ所ならともかく神殿にもたどりつけないなんてどういうことだろう?」
「おまえだけならともかく俺までこんなことになってるのはどういうことだ?」
「なんだよそれは。」
「俺は道に迷わない。」
「迷ってるくせに。」
不毛な会話だったがしないよりはましだった。ホーンは立ち止まりうしろを振り返ったが、どうしたわけか今来た道すらすでに頼りなく、下手に引き返すとなおさら途方もない方向にはまりこむような気が強くした。そんなわけはない、この道をそのまま戻れば必ずもとの街道に出られるはずだ・・めずらしく逡巡するホーンの横で、テオがあれ、と頭を高くあげる。
「ホーン、音がするよ。」
「音?」
「水の音。」
耳をすますと、確かにそれらしい音がしないでもない。ただの流れではない、滝の音だ。
「滝があるのか?」
「行ってみようよホーン、水が見たい。」
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