第2話・死ぬ時の走馬灯って、こんな感じだったのね。
高知県の田舎まで、あと10分ほどの距離。
蛇のような曲がりくねった山道。その足摺スカイラインを寄り道して、展望台から見える絶景を眺めてリフレッシュするひととき。
「さっ、そろそろ、行こうか。」
最後にジョン万次郎の石像の前で記念写真を撮って、駐車場へと向かった。
「なんか、俺たちだけで来るのは新鮮やな。」
目と鼻の先まで来ているからこそ、長旅の運転疲れから解放されるような感覚で、兄もかなりリラックスしていた。
交互に運転をしながら向かった高知県の旅。最後も運転を交代して、山道を走り始める。絶景でリラックスしたからか、ここからの車内は全員が無言になっていた。
すると、次の瞬間。
「キャーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
兄のガールフレンドの叫び声が、こだまする。
その声に反応して目の前を見ると、曲がり角のガードレールに突っ込んでいく光景が目に飛び込んできた。
「えっ、えっ、えっ・・・・」
突然のことすぎて、声にならない声が心の中で響き渡る。
そして目の前がスローモーションになったように、1秒をとても長く感じた。
さらにその間、脳裏にこれまでの過去で起こってきた、印象深い記憶が次々に甦っていく。膨大な過去のスライド写真が、1秒のスローモションの中で次々に映写されているようだった。
「えっ、えっ、えっ、これって、よく死ぬ間際に見る、走馬灯ってやつ!?」
そう思った瞬間。
「ドーーーーっン」
車はカーブを曲がることなく、そのまま直進でガードレールに突っ込んだ。
運転席と助手席は、ぶつかる瞬間にエアバックが出る。しかし俺は、後部座席でシートベルトもしていなかったため、そのまま頭部を座席に打ち付け、一瞬気を失った。
そしてまた目が覚めると、額から大量の血が流れていることに気づく。手を見ると、血だらけだ。そして、兄のガールフレンドがわんわん泣き叫んでいる光景が映った。その瞬間にまた、意識を失う。
「やっべ、これ、本気で死ぬパターンなんか・・・」
薄れる意識の中でそう思うと、また意識を取り戻して痛む足を見ると、パックりと膝のあたりが切れていて、白い筋肉が見えていた。額からも、足からも血が止まらない。それを兄が必死で止血している姿が目に映った。
「マジか・・・。油断大敵って、このことやな。あと少しの場所で・・・。」
出血が酷くなるにつれて、意識が朦朧としていく。全身に力が入らない。自分ではもう、自分の身体をどうにも動かせない状態まできていた。そして段々、目の前が真っ暗になっていく。もう、何も見えない。
やがて全ての感覚がなくなり、最後に残ったもの。それは意識だった。そのことを明確に味わった瞬間。
最後の力を振り絞って、俺は強烈に心の声で叫んでいった。
「もっと、生きたい!!!!!!!!!!!!!!!!」
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