第75話 番外編 ハーレムっぽい後日談
[どっちかのルートから繋がってるかもしれないし(繋がってないかもしれない?)
本編エピソードの後日談]
「明けましておめでとう!」
私は自分の家の玄関でリリアちゃんを出迎えてそう言った。
「明けましておめでとう、飛鳥。今日は呼んでくれてありがとう」
「ううん! 私のほうこそ遊びに来てくれて嬉しい!
とりあえず上がって。お父さんたち、お休みだからって旅行に行っちゃった」
年が明けて、お正月。
私の家にリリアちゃんが遊びに来た。
私の家から歩いて行けるところに、けっこう大きな神社があるんだよって話から
一緒に初詣に行くことになっていた。
それでせっかくだしリリアちゃんには初詣の前に、私たちの家に寄ってもらった。
自分の家にリリアちゃんが遊びに来てくれるなんて、ちょっと前だったら信じられない。
こんな嬉しいこと新年早々あっていいんですか!?神さま!?
なーんて思いながら、私はとりあえずリリアちゃんにリビングに来てもらった。
「蛍ちゃーん」
リビングに入ると、私はソファーでテレビを見ている蛍ちゃんに声をかけた。
蛍ちゃんは私たちに背を向けたままだった。
蛍ちゃんとリリアちゃんの関係、実はいまだによく分からないでいる。
今日は私がリリアちゃんと会う約束をしていた。
でも、どうせなら蛍ちゃんとリリアちゃんと三人で初詣に行きたいなって私は思った。
お正月だし、冬休みだし。
リリアちゃんは先月にシューティングスターを卒業して春からは大学生らしい。
リリアちゃんがアイドルをやめてしまったのはさみしいけれど、卒業ライブはすごく良い思い出になった。
蛍ちゃんにとっても、そうじゃないかなと思うんだけど。
感想を聞いても「別に」とか「普通」とかしか返ってこなかった。
「これ、よかったらみんなで食べて」
リリアちゃんがケーキっぽい白い箱を渡してくれた。
「ありがとう! お茶入れるからちょっと待っててね」
なんとなく流れで、リリアちゃんにはダイニングのテーブルの方に来てもらった。
リビングのソファーは三人で座るにはちょっと狭いし。
こっちの方が向かい合ってお喋りできるからいいかなって。
私はお茶を淹れ終わってテーブルに運ぶとソファーの前まで行き、蛍ちゃんに話しかけた。
「リリアちゃん、ケーキ持ってきてくれたよ。一緒に食べない?」
「……いいけど」
◇◇
私は今日、三人で出かけることをすごく楽しみにしていた。
神社は家から歩いてそんなに遠くない場所にあるし
昼間は混むから夕方くらいに、少しゆっくり出かけようって話になっていた。
「あれ? あー! 何で?」
ダイニングのテーブルについたら、蛍ちゃんがそんな驚いた声を出しながら私の肩を叩いた。
私の隣の席には蛍ちゃん。前の席にはリリアちゃんがいる。
「どうしたの、蛍ちゃん?」って私は尋ねた。
「私の行きたかったケーキ屋さんのケーキじゃん。しかも一番気になってた季節限定のショートケーキ!」
「そうなの?」
「飛鳥ちゃんがリクエストしたの? 私もこの前特集見て、冬休み中に絶対行こうって思ってたんだよね」
蛍ちゃんはちょっと高めのテンションだった。
「へー、そうなの? 私が選んだのよ」
ってリリアちゃんが私の代わりに蛍ちゃんの質問に答えた。
「私が好きなお店なのよ。気が合うわね、蛍ちゃん」
私はとくにケーキのリクエストとかはしていない。
リリアちゃんが持ってきてくれるものなら何でもおいしいに決まっているし。
ちょっとだけ三人がお互いを見る。
「……気が合うっていうか……、そんなのたまたまじゃん」
って蛍ちゃんは、ちょっと赤くなりながら私からもリリアちゃんからも顔を逸らした。
「「「いただきます!」」」
ケーキとお茶を前にみんなでテーブルを囲んだ。
「明けましておめでとう、蛍ちゃん。今年もよろしくね」
リリアちゃんが蛍ちゃんに新年の挨拶をしてる。良い雰囲気だなぁなんて思う。
「……あけおめ……。でも、去年リリアとよろしくなんてしてないよね? 楽屋でもほとんど話したことないし」
「じゃあ今年は仲良くしましょう? 飛鳥の妹だったら、私とも長い付き合いになるかもしれないわけだし」
「意味分かんないだけど。一生の付き合いなのは私と飛鳥ちゃんだから」
そんな感じで、リリアちゃんが持ってきてくれたケーキは
蛍ちゃんも気になっていたお店らしくて、
たしかにとってもおいしかった。私もケーキ屋さんの名前を覚えておこう。
そんなことを頭に浮かべながらケーキの上に乗っているチョコの飾りをフォークで持ち上げて食べた。
それはそうと、やっぱり二人ってけっこう仲が良いんじゃないのかなって
思ったり、思わなかったり。
「ふふっ」
「何で一人で笑ってんの、飛鳥ちゃん」
隣を見れば蛍ちゃんが私のことをちょっと睨むように見ていた。
「あれっ? 笑ってた?」
「うん。一人でふふって笑ってたよ。何かあったの?」
「いやぁ。ケーキおいしいなあって。あはは……」
気がつかないうちに笑顔になっていたらしい。
「だいたい飛鳥ちゃんは優柔不断なんだよね」
蛍ちゃんは最近たまにそんなことを口にする。
でも本気で怒ってるっぽくはないし、プンってした顔も可愛いから
まあいいかな、なんて。よくはないんだけどさ。
あはは……、って言おうとしたら
「そうね。私もそう思ってたわ」
ってリリアちゃんまで言い出した。
「え、えー、そ、そうかなぁ」
リリアちゃんにも思われてるのは意外だったなぁ。
確かにそうかもしれないなぁ……、なんていろいろ思い返してみようとして。
気づけば正面の席のリリアちゃんと目が合う。
「でも、そういうところも飛鳥の良いところだわ。……ねぇ、飛鳥」
って、リリアちゃんは私を見て微笑みかけてくれた。
相変わらずリリアちゃんは可愛くて優しい。何もかも完璧で私の理想の人で。
「そんなの、私だって思ってるし! 私の方が前から思ってたし!」
今度は蛍ちゃんが言ってくれた。
「ねぇ、飛鳥ちゃん!」って腕を引っ張られて隣の席の蛍ちゃんを見る。
蛍ちゃん、またちょっと機嫌悪そうなのかなぁなんて思えば、
予想とは違ってなぜか満面の笑顔だった。
蛍ちゃんも今日、楽しんでくれているのかもしれない。
なんとなくそんな気がした。
毎日一緒にいるから分かる勘、みたいな曖昧な感じだけど。
それで、私はどうかって言えば。
私はもちろん蛍ちゃんもリリアちゃんもみんなのことが好きで。
だから今日これから行く初詣では
みんなでずっと楽しく過ごせますようにってお願いしてこようと思ってる。
優柔不断かもしれないけど。
できれば今の幸せな時間がずっと続きますように。
家に帰ったら推しの同期(ライバル)が居た件 やまちゃん @yamachan777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます