ミミアン


『ケーキ屋さんになりたい❗️』


そんな妄想をしてた時もあったっけな。

でも最近では◯◯になりたい❗️なんて思ったことは無い。

お父さんは言う。

「有紗ももう中2なんだから、なりたいものくらい決めなさい❗️」

私は思う。

そんな事言われたって、分かんないよ。

 

ある日、私は近所のパン屋で働いているお母さんに会いに行った。

お母さんは、お客さんと話しながらレジ打ちをしていた。

私は、

大変そうだなぁ。

そう思った。 そう思う、 だけだった。

少し店の中をうろついていると、お母さんが私がいる事に気づいた。

「あ、有紗じゃない❗️どうしたの?」

「いや、別に。 暇だったから来ただけ。」

「そう。いくらでも居ていいからね❗️」

お母さんは、そう言った。

なりたいもの、か。

そんな事を考えていると、お母さんは、レジ打ちの仕事に戻っていた。

お母さんは仕事をしているはずなのに、少し、嬉しそうだった。

、、、変なの。

私は、そう思った。


次の日、私はお母さんに聞いてみた。

「何で仕事の時、笑ってるの?」

お母さんはこたえた。

「んー、そうだねー。仕事が楽しいから。 かなぁ。」

「何で仕事が楽しいの?」

私はそう質問した。

お母さんは言った。

「そりゃあ、お母さん自身が、自分が楽しめる仕事を見つけたからじゃないの?」

「自分が楽しめる仕事って?」

「んー。例えば、お母さんは人と喋るのが好きだから、人と喋る事が出来るレジ打ちの仕事を始めたのよ。」

「ふーん」   (、、、好きな事が出来る仕事を見つけたって事か。 )

「だから、有紗も自分自身が楽しめる仕事を見つけなさい❗️」(、、、自分自身が楽しめる仕事、か。)

私はその日の夜、なりたいものについて考えた。

「私の好きな事、、、、、あっ」

私は、自分の好きな事を、紙に素早く書き入れた。

「よしっ」

私は、「自分だけの物語を作る事」と、書き入れた。

「ふあ〜」 私は、大きなあくびをした。

「続きは明日にしよう」   

私は、ベットに寝転んだ。

「なりたいもの、、、興味、湧いてきたかも。」


私は、朝起きてすぐ、机に向かった。

そして、机の上にある紙を見た。

「んーそうだなぁ、、、」

少し考え込んでいると、隣にあった1冊の本に目が行った。

「、、、あっ」

私は紙に素早く、「小説家」と、書き入れた。

「小説家なら、自分だけの物語、作れるかも。」

私は、小説家になるまでに何が必要か考えてみた。

「小説家って事は、文を書くって事でしょ。  、、、っていう事は、、、」

「、、、国語って事❗️」

国語は、有紗が一番苦手な教科だ。

「小説家、、、なれるかなぁ、、、。」

正直なところ、不安だった。

(でも、小説家って決めたんだから、小説家って言うしか無いよね。)

私は、そう思った。


その日の夜、「私は両親に、小説家になりたい❗️」 と言った。

「小説家か、、、有紗、国語苦手なのに出来るのか?」

お父さんは言った。

「でも、、、」   私は、出来る❗️と言いたかった。  でも、言えなかった。

「いいんじゃない。小説家になりたいって有紗自身が決めたんだから。」

お母さんは言った。

「確かにな。、、、でも、小説家になるって事は、国語を頑張らなきゃいけないぞ。有紗。」

お父さんは、少しきつめの口調で言った。

「わ、分かってるよ。」  私は、戸惑い  ながら言った。

「頑張ってね、有紗。」

お母さんは、幸せそうな笑顔を見せ、言った。

(国語、頑張れるかな、、、) やっぱり、不安だった。


私は、いつのまにか、原っぱで寝転んでいた。

「国語を頑張らなきゃいけない、か、、、」

すると、耳元で、「チーン」という音がした。

「え、何?」

そう言って、私は後ろを向いた。

その瞬間、私は仰天した。    

さっきまであったはずの家が原っぱに変わり果て、さっきまでいたはずの人達が、いなくなっていたのだ。


私は、商店街に行ってみた。  商店街は、相変わらず人が多かった。

だが、他は違った。   

古かった店はどれも新しくなっていて、最近たったばかりの店は、無くなっていた。

それに何より、大型店舗がないのだ。

(え、なにこれ、変わりすぎでしょ、それに、洋服じゃなくて着物着てるって事は、

昔って事なの?)

戸惑っていると、同じくらいの歳の女の子に話しかけられた。

「そんな所で、何してるの?」

「あ、えーっとねー。」

私は、ここまでの経緯を彼女に話した。

「へー、それって、いわゆるタイムスリップってやつじゃん。」

「ま、まあそうなんだけどね。」

「ってゆーか、タイムスリップって本当に起きるんだ❗️」

「し、知らないよ。でも、実際起きちゃったの❗️」

「、、、ふーん。」

彼女がそう言ってから、しばらく沈黙が続いた。

「あ、そういえば、あなた、名前は?」

彼女は、話を切り出した。

「えーっと、松野、有紗。」  

「へー。有紗ってゆーんだ。私は、森 光希。」

「え、森、光、希?」

「え、あ、うん。そう、だけど。」

私は仰天した。  森 光希は、結婚する前のお母さんの名前なのだ。

「どうしたの?」

「あ、いや、なんでもない。」

光希は、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。

「そ、そんな事よりも、私は未来から来たんだし、ほ、ほら、何か、聞きたい事とか無いの?」

私は、どことなく雰囲気が気まずかったので、必死になって話題を変えた。

「聞きたい事?」

「ほ、ほら、例えば、未来の事、とか。」

「未来、か、、、」

光希は、少し間を置いてから、こう言った。

「じゃあ、私の未来の事、教えて。」

「え、光希の、未来?」

「うん。だって、私が名前言った時、聞き返したのって、未来の私を知ってるからでしょ。」

お母さんと同じだ。 お母さんは、何かとこういう事の勘が鋭いのだ。

「、、、はー。分かったよ。」

「え、本当、やったー❗️あんがと❗️」

私は、私の知っている限りのお母さんの事を話した。

「へー、、、って、何でそんなに知ってるの?」

「え、ま、まあ一応、な、なんと言うの、ま、まあ、私は、光希の、子供、だから。」

私は、戸惑いながら言った。

「、、、え、いや、え、それって、本当、なの?」

光希は少し戸惑っているようだった。 まあ、それも当然だろう。

「本当、だよ。」

「え、、、。」

そう光希が言ってから、また沈黙が続いた。

彼女は言った。

「へー。私、有紗のお母さんなんだー。」

「う、うん。」

「へー。あ、じゃあさ、結婚したって事だよね。」

「まあ、ね。」

「じゃあさ、私の結婚相手は?、、、え、ええっと、有紗のお父さんって事だよね。」

「えーっと、松野、義郎。」

「え、松野くん❗️」

光希は、驚きながら言った。

「う、うん。」

「えー❗️やばいやばい❗️松野君だったなんて❗️」

「その、ま、松野君って言うの?その、好き、なの?」

「もちろん❗️松野君ってちょーイケメンで、めっちゃ優しーんだよ❗️私のクラスで、好きじゃない女子なんていないよ❗️」

光希は、これまでにないくらい興奮しながら言った。

「へ、へー。」

「それで?その、、、松野君、大人になっても、優しい?」

光希は、イエスという答えを期待しているようだった。 が、私は、本当の事を言った。

「いや、怖い。正直言って、お母さん、いや、光希より、怖い。」

「、、、え?」

そして、もうひとつ言っておく事があった。

「でも、いつもは怖いけど、内面、私の事を、家族の中で一番大切にしてくれる、優しい人だよ。」

私は分かっていた。いつもはすごく厳しいけど、私の事を一番に考えてくれる、優しい人だという事を。

「、、、や、やっぱり❗️変な事言わないでよ、有紗。大人になって、性格グルったと思ったじゃん。」

「え、だめだった?」

「だめに決まってるじゃん❗️」

「えー。」

そう私が言った後、私達はお腹を抱えて笑った。  なんだか、仲が深まった気がした。

笑いが収まって、彼女は、ぽつりと言った。

「私、将来の事で悩んでるんだよね。」

「将来の、事?」

「、、、うん。」

私と同じだ。私も、将来の事で、今、悩んでいる。

私は、光希に親近感を覚え、アドバイスをしてやった。

「自分の好きな事を、仕事にするといいよ。」

「自分の、好きな、事?」

「うん。」

「自分の好きな事、、、か。」

光希は、少し考えてから、こう言った。

「私、人と喋る事が好き❗️」

「じゃあ、人と喋る事が出来る仕事って何?」

「うーん。」

光希は考え込んで、こう言った。

「接客、、、かな?」

「じゃあ、それが光希の目指すべきな将来の仕事。」

「え、すごいすごい❗️今まで悩んできたことが、有紗のおかげですぐ解決しちゃった❗️もしかして、有紗って天才?」

「天才、、、かも。」

「やっぱり❗️」

そう光希が言った後、2人は、声がかれてしまうほど笑った。

光希は言った。

「ま、有紗が私の未来についてアドバイスしてくれたんなら、私も夢に向かって突き進まなきゃね。」

「、、、。」  私は、さっきの光希の言葉が胸に突き刺さった。

「あ、やば、もうこんな時間?帰んなきゃ。じゃねー有紗❗️今日の事、ありがとー❗️」

「あ、行っちゃっ、た。」


ふと、お母さんの声がした。

「え、、、、はっ❗️」

「どうしたの?有紗。」

「え、お母さん❗️」

ふと周りを見渡してみると、そこは、原っぱだった。

「え、なんで?どうして?っていうか、何でお母さんが?」

「なんでって、スーパーから帰ってきたら、有紗が原っぱで寝てたんだもの。」

「え、私、寝てたの?」

「そうよ。あ、そんな事より、今日病院行くから、帰るわよ。」

「あ、はーい。」

そっか。出来るかできないかじゃない。やるんだ。光希が言ったように。夢に向かって、突き進むんだ。

「どうしたの?はやく行くわよ❗️」

「あ、はーい❗️」

私は車に乗り込み、ドアを閉めた。そしてお母さんは、車を発進させた。

車は、どんどん進んでいく。どんどんどんどん、進んでいく。 

窓を覗くと、夕焼け空が綺麗だった。

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ミミアン @pollux_castor

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