第24話・婚約解消決まりました


「ニコラスさまには最初から嫌われていました。ニコラスさまは、宰相の息子である自分が、なぜ低位貴族の婿にならないといけないのかと、よく零しておられました。私との婚約に不満をお持ちだったように思います。その為、両家から許婚同士仲を深めるようにとお膳立てされていた、月一回の茶会さえ嫌々参加されていて、私には口を聞いて下さらないこともありました。初めは寡黙で女性慣れしていない御方なのかと思っていたのです。二人で出かける時にエスコートなどしてもらったことなど一回もなかったので」

「あの子、マリーのエスコートを一度もしていなかったの?」


 王妃さまは唖然としていた。許婚をエスコートするのは、貴族子息にとって当たり前のことだ。礼儀として当然のことが出来てなかったと知り驚いたようだ。


「はい。その為、外出の時とか困りました。馬車から降りる時も手を貸して下さることもなく、さっさと一人で先に行ってしまわれるし、こちらは重いドレスを持ち上げて馬車を降り、やや駆け足ぎみに後を追うのが大変でした。少しでも遅れると愚図扱いされたので」

「最低ね。宰相宅では女性のエスコートを学ばせてないの? カメリア」

「そんなことないはずよ」


 マリーザの報告に、母のオルソラは眉間に皺を寄せ、王妃さまは失望の色を濃くしていく。


「いいのです。王妃さま。私が彼に嫌われていただけです。彼は他の女性をちゃんとエスコートしていましたから」

「他の女性って? あの子、許婚がいながらそのようなことを他のお嬢さんに?」


 ニコラスは浮気していたのか? と、問われてマリーザは頷いた。王妃さまに呼び出された時点で、何もかも曝け出す気でいた。自分の発言で彼への心証が悪くなったとしても、それは彼の自業自得だ。

 今までマリーザは妥協してきた。この婚約は王妃さまから是非ともと望まれたもので、王妃さまは母と親友の間柄だ。王妃さまの顔を立てて、彼の身勝手な行動には目を瞑ってきた。でも、もうその必要もないだろう。


「ニコラスさまは、サロモネ男爵令嬢に惹かれておいでです。彼女を伴い、我が家を訪れました。その時に、彼は気のある女性になら、エスコート出来るのだと分かりました」

「サロモネ男爵令嬢ですって?」


 驚く王妃さまに、オルソラはたたみ込んだ。


「これで婚約の方は解消してもらえるわよね? マリーはここまでされても今まで我慢してきたのよ」

「ごめんなさい。マリー。ニコラスはあなたに失礼なことばかりしてきたのね。婚約解消は仕方ないわね」

「じゃあ、認めてくれる?」

「……認めるわ」


 王妃さまは落胆していたが、渋々認めた。マリーザはこれでニコラスと縁が切れると安心した。


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