第16話・ニコレ嬢を信じてあげて下さい
「ニコレ。きみはメローネ嬢を虐めているんだって?」
「私はそのようなこと、していません」
「僕にメローネ嬢が言い寄っているとか、メローネ嬢が二人の仲を邪魔しているとか、周囲に言いふらしているそうじゃないか?」
「誰がそんなことを?」
それから数週間後。隣のクラスでは、ちょっとした騒ぎが起きた。一学年先輩のルアンさまが、メローネを連れてクラスを訪れ、ニコレ嬢を呼び出したのだ。
ジオヴァナ(シルヴィオ)と、二人で旧校舎に向かおうとしていたマリーザは、偶然3人がいる場に居合わせた。
「惚ける気かい? 可哀相にメローネ嬢は独りぼっちで、皆から仲間はずれにされていると聞いたよ」
ルアンは一方的に許婚を責め、自分の言い分を聞いてもらえずにニコレ嬢は可哀相にも俯いていた。メローネはルアンに庇われて得意顔でいた。
「お昼休みも独りぼっちで過ごしているメローネ嬢が不憫で、僕はそれに付き合ってあげていただけだと言うのに、変な噂まで流されて迷惑だよ」
「私は噂なんて流していません」
「きみはそんな子じゃないと信じていたのに……、残念だよ」
「ニコレ嬢を信じてあげて下さい。先輩」
傍から聞こえてきた声に、思わずマリーザは口を挟んでいた。ニコレ嬢はお隣のクラスにいるが、刺繍の時間や音楽の時間、自分がいるクラスと、ニコレ嬢のいるクラスと合同で授業を受けているので、彼女のことは知らない仲ではない。
ニコレ嬢は穏やかな性格で、人の悪口を言うのを嫌っていた。自分の許婚であるルアンと、メローネの噂が立っても、「ルアンさまのことだから何か理由があるのだと思うの。あんまりそのような事を言わないであげて」と、逆にルアンを信じて庇ってきたと言うのに、その本人から批難されるなんて見過ごせなかった。
「きみは……?」
突然、入り込んで来たマリーザに、ルアンは訝る様子を見せ、ルアンの後ろでメローネは唖然としていた。
「私はミラジェン子爵の娘、マリーザです。ニコレ嬢とは同級生になります」
「ミラジェン子爵令嬢と言ったら、ニコラスの許婚の?」
「ええ。ただ今、婚約破棄を申し込んでいるところですわ。誰かさんのせいでね」
やはりルアンは生徒会役員繋がりで、マリーザがニコラスの許婚だと知っていたようだ。マリーザはニコレ嬢の前に立ち、じろりとメローネをねめつけた。その隣にジオヴァナも並ぶ。ルアンはたじろぎ、メローネは姑息にも彼の後ろに隠れた。
「聞くつもりはなかったのですが、お二人の声が聞こえてしまいましたの。それで正義感の強いマリーが口を挟んでしまいました。お許し下さいね。ルアン先輩」
「ジオヴァナ嬢」
ルアンは、マリーザの他にも、ジオヴァナが出て来たことで、大変なことになったと思っているのだろう。愕然としていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます