第2話・宿題は自分でやるべきです
「ミラジェン子爵令嬢。彼女に何を言ったか分からないけど冷たくないか? メローネとは幼馴染みなのだろう?」
「それとこれとは別です。私は自分でやるべき事は自分でやるように言っただけです」
「メローネがこうして頼ってきているんだ。少しは助けてあげようという気にはならないのか?」
「宿題は自分でやるべきものだと思いますが」
マックスは、さっそくマリーザを批難してきた。彼はメローネの取り巻きの一人。剣術は得意だけど、勉強が苦手でメローネと同じクラスに属している。辛口の友人シル曰く、「脳筋」と、呼ばれる部類だとか。
マリーザとしては、すごく全うなことを言ったつもりだが、マックスはメローネの為なら何でもしてあげて当然だという気持ちがあるようで、彼女が頼って来ているのに、拒むとはけしからんとでも言いたげだった。
「全く、可愛げの無い女だな。少しはメローネを見習って愛想良く振る舞ったらどうだ? だから勉強しか取り柄がない、ブスだなんて言われるんだ」
マックスは失礼だった。マリーザは世間一般でブスと言われるほどの、醜い容姿をしているわけではない。彼としては、態度が可愛くないブスと、言っているつもりだったが、マリーザとしては外見を貶された気がした。
拳を握りしめて「グーパンチ」でもしてやろうかと考えていたら、メローネが彼の腕に縋り付く。
「マックス、止めて。宿題を期限内に終えることが出来なかったメローネが悪いの。マリーちゃんを責めないで」
「メローネは優しいな。今まできみは身体が弱くて保健室に通うことも多かったのに、頑張って授業に付いていこうとしていた。そんなきみを批難するミラジェン子爵令嬢を庇う必要も無いのに」
マリーザは呆れた。メローネのか弱い振りは演技なのに、マックスは完全に騙されている。メローネの騎士宜しく、マックスは睨んでくる。彼は将来、近衛隊所属希望とか聞いたけど、こんなんで大丈夫なのだろうか?
近衛隊と言えば王族の身を守る部隊だ。こんな稚拙なハニートラップに引っかかるようでは駄目だろう。
遠い目をしたくなったマリーザの耳に、「あらあら」と、笑いを堪えるような声がしてきた。
「ごきげんよう。私の親友マリーに何か御用かしら?」
「ゲッ。あく……」
「エスメラルダ公爵令嬢っ」
マリーザの背後から顔を出してきたのは、エスメラルダ公爵令嬢ジオヴァナだった。その彼女を見てメローネは何かを言いかけて止めた。きっと「悪役令嬢」とでも言いたかったのだろう。
メローネは、ジオヴァナに会う前から、彼女の事を悪く言い、悪役令嬢と決めてかかっていた。
マックスは大人しく口を噤んだ。この学園では皆が平等に学ぶことを推奨はしているけど、貴族関係での縦社会はそのままだ。彼は男爵子息だから、自分よりも高位の貴族令嬢であるジオヴァナを前にして、楯突く気はないらしい。そこだけは賢い選択をしたと言えた。
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