第4話 対面
「朝配信始めるぞ………ふぁぁ」
昨日夜遅くまで配信をしていた霧島は眠そうに朝配信を始めた。コメント欄では「あくび助かる」「昨日夜遅かったのに寝坊しないで偉い」などが流れる。
山元も朝配信をすかさずチェックしていた。慣れないコラボ配信を長時間行い、疲れたんだろうとあくびをしながら思っていた。朝ごはんを食べようとPC前の椅子から立ち上がり、明日の日付に丸をつけ、『霧島と喫茶店』と書いているカレンダーに目をやる。
「霧島さんとスケジュールの話するの明日か。ちょっと美容室に行っとこうかな」
何故美容室に行くほど気合を入れているのか、基本的にあまり見た目を拘らない山元だが、これには理由があった。
〜翌日〜
山元にしては少し気合を入れた、ちょっと高いネックレスに白のロングスカート、そしてシワ一つないクリーム色のコートを着て、約束の喫茶店へ向かった。約束していた時間よりも20分も早く着き、霧島を待つ山元。
10分程経った後、喫茶店に1人の女性が入ってきた。その女性は周りの客が振り返るほど可憐で男女関わらず1秒でも多く目に収めておきたいと思うほどの美貌。他の客を驚かせながら美しい女性は黒髪のロングヘアーを靡かせ山元の座るテーブルの元に行く。
「山元さん待たせてすみません」
「………」
「あれっ?山元さんどうしましたか?」
「はっ!?」
つい霧島さんに見惚れてしまっていた。気を取り戻して鞄にからノートパソコンを取り出し、スケジュールの話を出す。
「この日はボイトレがあるから絶対無理って言ったじゃないですか。あとこの週は配信多すぎで体壊すかもしれないから極力減らしてお願いしましたよね」
「でも、今皆が見てくれている間にできるだけ配信をしたいんだ」
この霧島の気持ちは山元にもよく分かってはいたが、それよりもこの大事な時期に体を壊して、配信やトレーニングを休んでほしくなかった。
「ご注文はお決まりですか?」
そこに店員さんが注文を聞きに来た。2人とも一旦話をやめ、メニュー欄に目を通して注文する。
「「チョコパフェでお願いします」」
2人の声がハモリ、互いに恥ずかしくなり目線を逸らす。店員は笑みをこぼしながら注文を聞き厨房に戻った。
「なら、この週は2日休みを入れて、ボイトレの日は朝配信だけっていうのでどう?」
互いの意見の中立をとった提案を山元が持ちかける。少し戸惑いを見せたが、霧島も了承してくれた。
チョコパフェを食べ終わり、店から出るとまた周りからの視線を感じる山元。その原因は明らかに隣の霧島にあった。このようになるため今日はマシな格好で来たのだ。最初に会った時は周りの視線が自分の小汚い姿に集まり、恥ずかしすぎてどこかに穴があれば入りたいほどだった。
「山元さん、その服って前回会った時に薦めたやつですよね」
前に霧島に似合うと褒められた服を山元は密かに買っていたのだ。そしてそんないい服を買ったことがなかった山元はやむを得ず薦められた服を今日着てきたのだ。
「やっぱり似合ってますね」
低音ボイスの霧島にそう言われ、山元は顔が真っ赤になった。
「じゃあ、私こっちなんで帰らせてもらいます」
これ以上いたら何か違う感情が生まれそうで即時撤退した。
家に帰り、ベッドへ飛び込み、顔を手で覆う。
「あれは反則だわ〜」
と呟く山元だった。
Vマネちゃん奮闘記 色塚京 @irotukakei
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