第39話 礼をもって礼に応える(4)

 電車の中で、陽向の言葉が気になって、調べてきた水波野菜乃女神のことを読み返していた。


(最後に言ったことは、火の神の伝言ではなく、あれは陽向ちゃん自身の言葉だろう。だとしたら、陽向ちゃんは水波野菜乃女神となにかあったのか?もしかしたら、見たことがあるのかもしれない。陽向ちゃんは、巫女だし、姿を見ることができても不思議じゃない。でも、いつだろう・・・・・・)


 実菜穂は、ペットボトルの水を一口飲むと、思い当たることは一つしかないことに気がついた。


(祠の件だ。おそらく、移設の件で水波野菜乃女神のもとに行った。そのときに姿を見ることができたのだろう。でも、何があったのだろうか)


 結局は、なにも分からないということが分かっただけで、これも自分で行けば何か感じるものもあるのではないかと一人でに納得していた。


 昼過ぎには水波野菜乃女神みずはのなのめかみの神社に着くことができた。移動中に遅めの朝食をとったから、空腹感は無かった。

 

 改めて神社を見ると、その大きさに驚いた。

 

 陽向の神社の倍以上は広かった。大鳥居がそびえ立っており、そのまっすぐ延びる参道の先に随神門ずいじんもんを拝むことができた。陽向の神社も大きいとは思っていたがこれほど壮観だと、驚きを越して感動が押し寄せてきた。ただ、平日のこの時間帯が理由なのか分からないが、参拝者が見あたらないのが不思議に思えた。これほどの神社に人を見かけないことはまずない。それは、まるで実菜穂だけを待っていたかのような光景だった。実菜穂は、大鳥居に入る前に一礼をした。ここから先は聖域。みなもの姉様が祀られている聖域だ。みなもが神様であることは、頭では理解していたつもりであったし、現実に体現もした。だけど、実菜穂の心の中ではどうしても、みなもは友達、親友、いや、そんな感じではなく、自分にとって必要不可欠な存在。あえて言えば、「自分自身の中にみなもがいる」そうとしか表現が思いつかなかった。そのみなもは、水波野菜乃女神の分霊であり妹である。神霊同体とまでなったみなもの元となる神様がこの先に祀られている。今更ながら、実菜穂は喉の渇きを感じるほど緊張が走った。


(そうか・・・・・・)

 

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