第38話 礼をもって礼に応える(3)
実菜穂は、入学式までの短い休みの間に、みなもへの思いを伝えることを決めていた。みなもは母さのもとへ行くと言っていた。それならば、直接、姉さと母さのところにお礼参りをする。みなもに御霊を授け送り出してくれたこと、みなもから多くのことを教わったこと、母さ、姉さへ深い思いがあること。自分にとってみなもがいかに大切な存在であったか、全ての感謝を伝える。みなもが言う『礼をもって礼を伝える』これが、実菜穂が出した、「望み」の答えだった。
実菜穂は、以前からアサナミと水波野菜乃女神について勉強していた。水波野菜乃女神を祀る社は3県またいだところにある。そこから1県またぎ、アサナミの社がある。1日では行程に無理があるので1泊する事にした。陽向に相談した結果、女子会で陽向のところに泊まることで口裏合わせをしてくれることになった。
実菜穂は、出発当日、早朝から陽向の神社に来ていた。陽向に母から持たされた手土産を渡すと、地図を取り出して行程確認をした。
「陽向ちゃん、いろいろ情報ありがとう。今から行ってくるけど、口裏合わせよろしく」
「分かってる。でも、実菜穂ちゃんからも夜には一度、家に電話しておいた方がいいよ。みなも、絶対帰ってくるから」
陽向は、みなもの祠が移設される場所を指さした。
「うん、ありがとう。陽向ちゃん、前にも話したことだけど、お礼参りから帰ってきたら、舞台を貸して欲しいの。私、舞をしたいの」
実菜穂は、陽向に頭を下げてお願いした。
「もちのロン!実菜穂ちゃんから舞を奉じたいって聞いたとき、それが何よりもの方法だと私も思ったから。私も舞うから」
陽向は笑って、実菜穂の肩を叩いた。実菜穂は頭を上げると、陽向に目で合図してバックを肩に担いだ。
「じゃあ、行ってくるね」
陽向に声をかけると、陽向は実菜穂を引き留めた。
「待って。本当は私も行きたいけど、実菜穂ちゃん一人で行く方が良いからって、氏神から止められた。氏神が言ってた。実菜穂ちゃんに伝えて欲しいって。『多くの人は目に見えるものしか見ようとしない。だけど、目に見えないものを見ようと努力する人もいる。その努力する人は、水の心を持つ人だと』あともう一つ『みなもの姉様は全てを見通す目をもつ。いらぬ隠しだては不要』そして、これは私から。実菜穂ちゃん、願掛けはしないで」
陽向の言葉に実菜穂は頷いて見せると、陽向は実菜穂を抱きしめた。
「
陽向は実菜穂の耳元で囁くと、頬をよせた。陽向が微かにだが震えているのが分かった。実菜穂は、陽向を強く抱き締めた後に、神社を出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます