第33話 消えるみなも(6)
放課後、少し冷えるなか中庭のベンチに座り実菜穂は陽向に昨日のみなものことについて話をした。陽向は、気持ちが動揺している実菜穂を落ち着かせながら、優しく、真剣に話を聞いていた。
「実菜穂ちゃん、祠のことは私に少し時間くれない?ひょっとしたら何とかなるかも。実は、うちの社で受け入れることは、水波乃菜野女神の社からは了解をとってるの。ただ・・・・・・」
陽向は、実菜穂の様子を見ながら、話を進めるかどうか迷っていた。
「どうしたの、陽向ちゃん?」
実菜穂は、陽向の様子を逆に心配して言った。
「実菜穂ちゃん、たぶんすぐに気がつくと思うけど、私が随分と手回しがいいなって思うでしょ」
陽向がそう言うと、実菜穂はゆっくり頷いた。
「うん。たぶん、火の神が事情は知っているだろうなって考えてた。陽向ちゃんが、どこまで知ってるのかなって、昨日は考えてた・・・・・・」
「そうよね。みなもが、実菜穂ちゃんにそこまで話しているのなら、私も話すね。本当は、実菜穂ちゃんに舞をお願いした時には知ってたの。でも、実菜穂ちゃんには話しては駄目だと氏神から止められてた。実菜穂ちゃんが知ったとたんにみなもは消えるつもりだからと。だから、そのときから内緒で何かできないか、いろいろ考えたりしていたの。でも、話したいのはそこじゃないの・・・・・・」
陽向は、実菜穂に落ち着いて聞いて欲しいとお願いすると、実菜穂は頷いて返事をした。
「ずっと、考えていたことがあった。実菜穂ちゃんがなぜ、みなもが見えるのかはまだ分からないけど。昨日のこと、実菜穂ちゃんが話してくれたこと、今まで考えていたことが何となくだけど繋がったの。みなもが何を思っているのか分かった気がする。氏神が言ってた。自分たちは太古の神から見れば、まだまだ若い神なのだと。もし、太古の神から見て、氏神やみなもが、私達と同じくらいの世代だとしたら、みなもが人に寄り添い、人に近づいている神であるとすれば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
実菜穂は、陽向の話を聞き終わると、目が真っ赤になった。肩を震わせ、握り拳を作ると思いっきりベンチに叩きつける。鈍い音がした。
「私は・・・・・・わたしは、あほうかあ!私はあほうだ。アホだ、アホだあ。私は何も分かっておらぬではないかあ」
学校中に実菜穂の声が響きわたった。校内が一瞬ざわめいた。実菜穂は、何度も何度も拳をベンチに叩きつけた。陽向が止めるまで何度も。
実菜穂は、赤い目で陽向を見ると、そのまま走って学校を出ていった。声を聞きつけた秋人が駆け寄ってきた。実菜穂の後を追おうとしたが、陽向が引き留めた。
「秋人、私の話聞いて欲しいんだけど・・・・・・」
陽向はそう言うと、秋人を引っ張って行った。
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