第29話 消えるみなも(2)
翌日、みなもは学校に来ていた。いつものジャージ姿ではなく、学校の制服姿は初めてのことだった。ちょうど、合服シーズンを終て、冬服になっており、紺のイートンジャケットに水玉のリボンネクタイで飾った白地の襟元から、みなもの長い髪がよく映えていた。陽向と三人で座って仲良く話しているところなどは、どこから見ても仲良しな三人組である。もっとも、みなもは他の人には見えなかったが。
「もう、家に閉じこもりきりで、通学以外は外に出てないよう。実菜穂ちゃんは、大丈夫だった?この時間が一番安心できる」
陽向は伸びをしながら言った。
「私は大丈夫だよ。陽向ちゃんと違ってどこの誰かも分からないだろうから。でも、陽向ちゃんの所にはまだ、人が押し寄せてるの?」
「うん。この前は取材の電話あったみたいだけど、お父さん断ってた。実菜穂ちゃんのことは、話してないから大丈夫だと思うけど」
「そう心配せんでもしばらくしたら落ち着くでな。火の神も、陽向のことは心配して目を光らせとるぞ。一番頼りになる用心棒じゃ」
みなもはクスクス笑って言うと、つられて陽向も笑い出した。ただ、実菜穂だけは、心から笑えなかった。祠のことが気がかりながらも、直接聞くのが怖かった。
「実菜穂ちゃん、どうかした?」
陽向が浮かない顔の実菜穂に声をかけた。
「なんじゃ、誰も訪ねてこぬから案外、不満じゃったかの?」
「ちがうわい。みなもは私のこと心配せんのかい?」
みなもが笑いながら言うので、実菜穂もつい乗せられて返事をしてしまった。みなもと陽向はまた笑いだした。
「おっ、いたいた。陽向はだいじょうぶ・・・・・・あれ?」
声を掛けてきたのは秋人だったが、二人を見ると不思議そうな顔をした。
「秋人、どうしたの?」
考え込む秋人に実菜穂が言った。
「いや、さっきこっちに来るときに・・・・・・そこにもう一人いなかった?髪が長くて目を引いたけど、今まで見たことない子だった・・・・・・」
秋人は実菜穂と陽向の間を指さして言った。二人は顔を見合わせるとお互い思っていることを確認するように頷いた。みなもの姿はそこにはもうなかった。
「こりゃあ、ちぃーと、まずいのう・・・・・・」
みなもは屋上からその様子を眺めて、考え込みながら呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます