第24話 礼をもって礼を伝える(6)
実菜穂は、言われるまま知らず知らずに力んでいた身体をゆるめると、陽向を見て、思わず息をのんだ。陽向は全身から目が眩むほどの光を放っていた。その光は一筋一筋が無数に四方八方に放たれていた。瞳は深紅に輝きこちらの姿を捉えている。
『見事じゃのう。のう、実菜穂、あれが火と光の神の姿じゃ。あの光、あの眩しさ、思わず跪きたくなろう』
実菜穂は頷いた。実際、いま立っているのが精一杯である。少しでも力を緩めようなら本当に両膝をついてしまいそうな神々しい光が陽向から放たれていた。
『実菜穂、神々にも争った歴史があってな。ある神には、その戦いの歴史から敬称のようなものがある。まあ、特性のようなものじゃ。火の神にも当然あってな。なんと言われておるか知っておるか?』
実菜穂は首を振った。みなもは、フッと笑うと答えた。
『「火は
「えっ!そうなの」
『そうじゃ。神の眼でしか見えぬ。いま、お主は儂じゃ。儂はお主じゃ。
「神霊同体・・・・・・ねぇ、みなも、陽向ちゃんから私はどう見えてるのかな?」
『気になるか?まあ、陽向の顔を見とれば分かる。心配するでない。お主に恥はかかせぬ!』
みなもがそう言ったとたん、実菜穂の中にさらにグッと入ってきたかと思えば、意識も何もかもが青色に染められていき、すべてが新しく生まれ変わるような感覚を覚えた。実菜穂の周りには、青き光が清流のように流れて身体を包み込むと、それが羽衣となり身に付いた。青き光の羽衣である。さらに瞳は群青色の深い光を放ち陽向を捉えた。陽向は、その瞳に吸い寄せられそうになっていたが、グッと力を入れて踏ん張った。実菜穂の姿は、水の女神であった。あらゆる汚れ、不安を洗い流し、あらゆるものの命を育む清流の水。すべてのものを受け入れ、力を入れて踏みとどまらなければ、吸い寄せられてしまう群青色の深きわき水のような瞳。
『陽向よ。見えておるか。あれが水の女神だ。妹とはいえ
その声に陽向は頷いた。
『陽向よ。古来より水の神の力に敬意を込め、伝えられる言葉がある。それは「水を敵とするな」だ。神々の争いにおいて、水の神を味方にすれば勝利は確実であるといわれる。味方にできなくば、絶対に敵にしてはいけないということだ。それほど水の神の力は絶大なのだ。美しさと力を持つ神』
陽向は瞳をそらせないまま深く頷いた。
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