第19話 礼をもって礼を伝える(1)
夏休みも終わりに近づくと、受験モードの空気が漂い始めていた。休みの後半は補講が午前中にあり、各自が英、数、国の好きな科目を受ける形となってた。実菜穂はもっぱら国語の補講を受けていた。秋人はよく笑うようになったせいか、男女関係なく質問を受ける光景を目にした。実菜穂も陽向も微笑ましく見ていた。もっとも、それは実菜穂の成績向上が宣伝になったようだが・・・・・・
実菜穂にも変化があった。一つは水泳をまた始めたことだ。とりあえず、市営プールに週2回程度泳ぎに行くようになった。スイミングに行っていたときの水着を出して着たときは、サイズが小さくなっていたことに驚いた。成長しているということで、当然なのであるが、最初は自分が太ったのではと勘違いするくらいであった。慌てて水着を新調したことは言うまでもない。
実菜穂はプールでは自由だった。スイミングのように決められたスケジュールやタイムを気にすることなく、好きな泳法で自由に泳いだ。壁を蹴って、全身を水にゆだねる。外の雑音が遮断されて、水と空気の流れる音だけが聞こえるこの瞬間がとてつもなく好きだった。水に抱かれた身体がやがて、水面にでる。水と外界を切るように手を差し伸ばす。指先を見ると、水滴が弧を描いて飛び散るのが見える。こんな気持ちで泳ぐのは、何年ぶりだろう。実菜穂は全身で水を楽しんだ。そんな実菜穂の横をみなもがすり抜けていく。当然、他の人にはみなもは見えることも触れることもない。どこで真似たのか実菜穂の水着よりもさらに競技向けの水着を身に付け、前に横にと一緒に泳いでいる。それを見ながら、実菜穂は楽しんでいたが、一つ気になることを発見した。
(みなも、スタイル良すぎ・・・・・・!!)
変化の二つ目は、陽向から舞を習っていることである。これは、以前に陽向から依頼された豊穣の感謝を捧げる神楽の舞を練習していた。型があるとはいえ、これがなかなか、上手くいかない。陽向と二人三脚で舞っているから何とか、挫けずにできているというところである。それでも、やはり経験無いことを実体験できることはなんともワクワクすることであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます