第43話
「ちっ」
僕は舌打ちを一つする。
「僕たちは犯罪を取り締まりに来たの。奴隷制度にケチつけるためでも、奴隷を路頭に迷わせることでもないでしょ?」
「あ、あぁ。そうだな」
ルトは僕の気迫に押されたのかこくこくと頷く。
「だが……」
しかし、それでもルトは納得できていないようだった。
それはマリアお姉ちゃんたち聖女も同様だった。
「じゃあもう第二王女様と僕だけで見に行ってくるから君たちはここで待っていてよ。君たちにまだここは早かったんだよ。いいよね?第二王女様?」
「あ、あぁ」
第二王女様は僕の言葉に頷いた。
「じゃあ行きましょう」
僕は第二王女様の手を取り、歩を進めた。
■■■■■
僕は何か犯罪行為が行われていないか、見回りを行う。
まぁ、僕が今日は何も犯罪行為はしないようにと命令を下しているので当然なのだが。今日だけはここで犯罪行為は行われていないだろう。
だけど、一応そういう仕事なので犯罪行為が行われていないか目を光らせながら歩く。
そんな僕の後ろを第二王女様は無言でついて来る。
「すまない……」
ポツリ。
第二王女様はポツリとつぶやく。
「何が?」
「君は奴隷だったのだろう?」
「……うん。まぁそうだね」
僕は本当に一時奴隷をして働いていた過去もあるので、間違いではない。
たった一年だけだったけど。
「すまないな。私が、私たち王族が不甲斐ないばかりに……」
「謝らないでくれる?何も知らない、別に王様になるわけでもない第二王女様がどんな価値観を持っていようが関係ないけど、僕を前にして謝らないでほしい」
謝るのだけは辞めてほしい。
昔を思い出すから。何も出来なかった自分を。夢見ていた自分を。前世の価値観に囚われていた自分を。
「奴隷は必要なものなんだよ。アンデッドたちの脅威がある中、この世界に住む全員が生きていく方法なんて無い。お金がない地方の村とかだったら普通に餓死者も出ているんだ。村を失った人たちの仕事も、食料もない。だから殺すんだ。冒険者としてアンデッドと戦わせて殺す。奴隷として擦り切れるまで働かせて殺す。少数の人間を切り捨て、大多数が生きていけるようにするしかないんだよ。それに奴隷として生きている間はちゃんと食べ物が手に入るからね。それ以上に嬉しいことなんてないよ」
「……」
僕の言葉に第二王女様は顔をクシャクシャにする。泣かないでよね?
「ほら。もう一通り見終わったし、帰るよ?」
「……うん」
第二王女様は僕の言葉に頷いた。
僕の優れた感知機能はマリアお姉ちゃんたちに近づく人の存在を捉えていた。
カクヨム用の短編小説。
『怪異慣れしすぎたせいか口裂け女程度じゃビビりません!』
を投稿したのでよかったら見てください!
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