第44話
「よっと」
僕は第二王女様と第二王女様の護衛としてついてきている人たち全員をまとめてルト達がいる場所へ転移させ、僕もサクッとその場に転移する。
その際に闇魔法を使い全員に僕達が歩いて戻って来たというふうに記憶を書き換える。
僕は吸血鬼としての力を開放していた。
「これで調査は終わりよ。もうこれ以上こんなところに居たくないわ。早く帰りましょ?」
第二王女様が口を開く。
気持ちは大いに分かるが、こんなところ呼ばわりは酷くない?
「あぁ、そうだな」
ルトたちもその言葉に同意する。
僕たちは密会が出来るようになっている小さな部屋から外に出る。
「何よ?」
僕らが部屋を出ると同時に、仮面をつけ、ボロボロのフードつきのローブを纏った男たちが僕たちを囲んでくる。
そんな彼らの手にはキラリと光る刀が握られている。
「聖女たちだな」
くぐもった声が聞こえてくる。
「悪いが死んでもらう」
男たちが剣を振る。
それを第二王女様が受け止める。
「何のつもりだ?」
「邪魔さえしなければ殺すつもりなどないんだが……」
第二王女様と男が睨み合っている時、
「やれ」
僕は静かに命令を下した。
彼らの中にいる僕の『顔見知り』に向かって。
「ぐほっ!」
「ぐはっ!」
悲鳴が折り重なる。
「な、なんのつもりだ!」
剣を振り下ろした男がいきなり仲間を斬り殺した人たちを見て動揺する。
僕の『顔見知り』が剣を振るい、同士討ちを初めたのだ。
「簡単な話だ。俺らはこのガキについていく。ただそれだけの話だ」
「正気か!?貴様らあの組織を敵に回すとでも!?」
「はっ。あの組織よりも遥かにこのガキの方が恐ろしいんでな」
「こんなか弱いガキを捕まえて恐ろしいって酷くない?」
「それは今までの自分の行為を見つめ直してから言ってくれ。ということでわりぃが死んでくれ」
僕と会話していた僕『顔見知り』は最後の一人になってしまった剣を振り下ろした男の首を切り落とした。
「ご苦労さん」
僕は彼らにねぎらいの言葉をかける。
「後は僕に任せてくれていいよ。君たちの選択が間違っていなかったことを教えてあげる」
「へいよ」
「あ、そこの子たちも守ってね?」
僕の闇魔法によって意識を奪われて絶賛気絶中であるルトたちを示す。
「騎士たちもお願い」
ずっと魔法で姿を隠して密かに護衛をしていた人たちにも声をかける。
騎士たちは魔法を解き、素直に僕の命令に従った。
彼らはこの国の精鋭中の精鋭。
僕のことを知らされているのだろう。
黄昏の吸血鬼
と呼ばれた僕のことを。
「さて」
僕は視線を変える。
「未だエルダーにも至っていないガキを味方するとは……愚かだな。やはり人はどこまで愚かだ」
ゆっくりとこちらの方に近づいてくるエルダーヴァンパイアの方に。
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