第45話
エルダーヴァンパイア。
ヴァンパイアの上位種。僕の上位種。
あの日『ヴァンパイア』とか名乗った男とは別の男。だが、とある組織の人間だろう。
100年に一度だけ誕生すると言われているエルダーヴァンパイアが二人も同じ組織に属しているなんて本来ならばありえないことだろう。
まぁあのとある組織は幹部5人全員がエルダーヴァンパイアらしいだけど。
とある組織の幹部の一人だと思われる男はゆっくりとこちらに近づいてきていた。
「そんなことはない。君でなく僕を選んだ彼らは英断だよ」
「戯言を……真の吸血鬼!誉高き吸血鬼!その頂に!手を伸ばした私が!このザラリオに!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!逆らうとは!」
ザラリオはそんなことを叫びながら体を赤く染め上げる。
それに応じるように僕の体も蠢く。
僕の体は手の集合体へと成り果てる。
右腕は血の影に覆われ、うねり声を上げる。
「ふん」
僕は伸びた右腕を力任せに強引に振るった。
目の前にあるものすべてを破壊して突き進む剛腕を……しかし、ザラリオに当たる前に細切れにされる。
切断したのはいつの間にかザラリオの手に握られていた真紅の刀。
ダンッダンッダンッダンッ
僕の両手に握られている二つの拳銃が火を吹く。
「ぐふっ!?」
放たれた4発の弾丸はザラリオを的確に撃ち抜く。
心臓は狙わない。
無駄になるとわかっているからだ。
心臓は吸血鬼にとって唯一の弱点。当然その分守りも頑丈。
心臓を血で覆い、守っているのだ。吸血鬼の心臓を貫くにはかなりの力を込めて攻撃しなければならない。
相手が抵抗できないくらいボロボロにしてからでないと貫くことは出来ない。
「ぬぅ!?」
ザラリオは再生しない自分の体を見て驚愕の声を上げる。
僕の血で出来た弾丸はザラリオの体に侵食し、再生を阻害する。
人間に一発でも当てれば血が一気に全身にまわり、一撃で殺す。そんな弾丸だ。
「小賢しい!」
ザラリオの体から幾つもの真紅の武器が溢れ出してくる。
それらは一斉に軍をなして僕に向かって飛んでくる。
キンッキンッキンッキンッキンッキンッ
幾つもの金属音が重なり合う。
僕が『血の記憶から再現した』幾つもの剣を飛ばし、ザラリオの幾つもの真紅の剣を撃ち落としたのだ。
「ちっ」
ザラリオが舌打ちを一つ。
「貴様は本当にヴァンパイアなのか……」
「当然」
「……ふぅー。だが、もう終わりだ。もう終わらせる。俺の力を。エルダーヴァンパイアの力を見せてやろう!」
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